女子学生に「処女」を条件に奨学金を出す制度は、女性差別か健康を守るための教育的措置か、南アフリカで論争になっている。2016年6月、AFP通信など複数の海外メディアが報道した。
それによると、同国政府の男女平等委員会は6月17日、同国東部のクワズールー・ナタール州の自治体が16人の女子学生に大学卒業まで「処女」でいることを条件に奨学金を出している制度について、「人間の尊厳、平等、差別に関する憲法の条項に違反している」と判断、廃止すべきだと勧告した。
「シュガー・ダディー」からエイズをうつされる少女たち
この制度は同州のウトゥケラ区が行なっているもの。奨学金を受ける女子学生は、定期的に年配女性が務める「処女検査官」を訪れ、チェックを受けることになっており、こうした検査に人権団体から激しい非難の声が上がっていた。
AFPの取材に対し、同区の区長は「女子学生をエイズ(後天性免疫不全症候群)から守ると同時に、10代の妊娠防止のためには非常に効果的な方法だ」と説明した。一方、男女平等委員会は「処女であることと学業の本質とは関係ない」と述べ、60日以内に廃止するかどうかの回答を求めた。
南アフリカは、もっともエイズの感染率が高い国の1つで、人口約5000万人のうち600万人(12%)がHIV(エイズウイルス)に感染しているといわれる。中でも若い女性の感染率が高く、2013年に同国保健省が発表した統計によると、中学生以上の女子生徒の28%がHIVに感染している。一方、男子生徒の感染率は4%だった。また、2011年に妊娠した女子生徒の数は9万4000人にのぼり、中には10歳以下の少女もいたという。
当時、アーロン・モツォアレディ保健相は「少女たちが『シュガー・ダディー』(甘言と財力をエサに若い女性に近づく男)と関わりを持つ風潮を終わらせなければならない」と訴えた。