高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
参院選での政党の選び方 安全保障と経済をどう見るか

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   参院選では、選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられる。この見直しは、25歳以上から20歳以上に引き下げられた1945年以来約70年ぶりで、約240万人が新たに有権者となる。今回は、特にそうした若い人に向けてアドバイスを贈りたい。

   選挙ではいろいろな政策をみなければいけないが、各党の選挙公約をみても、いろいろ書いてあって判断に迷ってしまうだろう。大きなポイントは、安全保障と経済である。

  • 若い人へのアドバイスは「自分なりの問題設定を」。
    若い人へのアドバイスは「自分なりの問題設定を」。
  • 若い人へのアドバイスは「自分なりの問題設定を」。

自衛隊は合憲か違憲か

   そこで、安全保障と経済それぞれについて、単純な質問を考えてみよう。それにどう思うかについて、どの政党に投票すべきかどうかが簡単にわかる。

   安全保障では、自衛隊について合憲か違憲かのどちらと思うか。高校や大学で憲法を習うと、自衛隊は違憲であると教わることが多い。実際の憲法学者の大半は、自衛隊は憲法違反であるとしている。筆者が学生の時も自衛隊は憲法違反であると習った。しかし、社会人になったら、自衛隊は合憲であるとして社会の仕組みができている事がわかった。

   もし自衛隊が違憲であれば、将来は自衛隊をなくすべきだ。しかし、自衛隊が合憲であれば、このまま自衛隊があっていい。ちなみに、自民、公明、おおさか維新は自衛隊を合憲としている。共産は一貫して自衛隊は違憲という立場だ。民進は自衛隊が合憲であるが、違憲であるという共産と、この参院選では共闘しているので、果たして両党から推された候補者は股裂き状態になる。

   経済では、新卒者の就職率を高める政党はどこか。経済はいろいろな角度から見ることができるが、雇用の確保が最も重要である。雇用の確保ができないと格差問題も解決しない。職がない人と職がある人では、格差が最も大きくなるからだ。

自分なりの問題設定をして各政党の評価を

   雇用の確保が大切といい、就業者数が増えていることや全国各地で有効求人倍率が1を超えているというと、すぐ非正規が増えているだけとか、賃金がまだ上がっていないと言う人がいるが、その人たちの意見は争点そらしなので注意しよう。

   非正規でも増えているほうがいい、非正規になる前は多くの人は無職だからだ。それに賃金というが、無職から有職になってもはじめの賃金は低い。そのために平均の賃金をみると下がって見えるが、いままでと同じ賃金の人がほとんどだ。「無職で賃金なし」から「平均より安いが賃金がある」へ移行する人が増えるだけだ。

   雇用は、正規雇用などの既得権のコア部分では変化はわかりにくく、新卒者などの既得権がなく限界的なところでの変化に顕著に表れやすい。

   大学の就職率は、文科省・厚労省が公表しているが、2016年は97.3%と、統計を取り始めた1997年以来で一番高い数字だ。実は、大学の就職率は前年の失業率に依存している。前年の失業率が1%低下すると、就職率は3%程度上昇するという関係になっている。景気と失業率の間には、逆相関の関係がある(オークンの法則)から、これは景気がいいと新卒者の就職が楽になるという単純な事実だ。

   なお、民主政権であった2010~2012年の就職率は91~93.6%であった。データから見れば、安倍政権のほうが就職率は高くなっている。

   もちろん、就職率なんてどうでもいいという人もいる。一流大学であれば、景気に関係なく就職はあまり困らないし、就職できるかどうかは景気より個人の能力と考える人は、就職率は考慮対象でない。

   それぞれの人がどう考えるかは自由であるので、自分なりの問題設定をして各政党を評価したらいい。選挙は面白いし、選挙を通じて政策がよりわかるので、是非選挙に行ってほしい。世界の中では、中国や北朝鮮のように選挙が事実上ない国もあるので、日本で選挙があることを感謝してもいいくらいだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、「マイナス金利の真相」(KADOKAWA) など。


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