インタビュー連載の最終回は、鹿児島を中心に活動する学生団体「学生投票率100%を目指す会」会長の中村敦信さん(20)に、「若者の投票離れ」への考えや学生団体「SEALDs(シールズ)」に対する印象を聞いた。
県選管の啓発ポスター作成に協力
――「学生投票率100%をめざす会」とは、インパクトの強い団体名です。どのような活動を行っているのでしょうか。
中村: 団体名から投票啓発の運動ばかりしていると思われることが多いですが、メインの活動は「政治と選挙をからめた勉強会』です。鹿児島県庁の会議室をお借りして、月に1回ほどのペースで勉強会を実施しています。メンバーの大学生だけでなく、高校生も活動に参加しています。
――今回は選挙権年齢が「18歳」に引き下げられてから初の参院選となります。投票啓発運動など、選挙に向けてどのような取り組みを行っていますか。
中村: 鹿児島県の選挙管理委員会と協力して、駅や大学などで「選挙に行こう」という呼びかけ運動を実施しています。また、6月17日に県の選管が発表した投票啓発ポスターにも協力しています。デザインやキャッチコピーは私たちが考案しました。「私たちが主役の18歳選挙、はじまる」という文章が目立つようなデザインになっています。
家の中で政治について会話する文化が消えつつある
――選挙権年齢の引き下げについては、率直にどう考えていますか。
中村: 正直、どうなるかは分かりません。政治に関心がある18~19歳の有権者は選挙に行くと思いますが、「政治に全く関心がない」若者も少なくないと思います。こうした状況の中で、どれだけの若者が「選挙に行こう」と考えるかは疑問です。
また、今回は初の「18歳選挙権」の国政選挙ということで、メディアも若者を中心に大きく取り上げています。その分、政治や選挙に関心を持つ若者は一時的に増えているかもしれません。ですが、18歳選挙の「目新しさが薄れた」後にどうなるかについては、悲観的に見ています。
――確かに、14年の衆院選でも、20代の投票率は約32%。年代別では最低の数字で、投票率が最も高かった60代とはダブルスコアの差がついています。「若者が政治に関心を持てない」理由について、何か考えることはありますか。
中村: 親の影響が強いように感じます。家の中で、政治について会話するという文化が消えつつあることが、若者の政治離れにつながっているのではないでしょうか。過去の投票率の推移を見ると、20代の投票率が低いのは何十年前からずっと変わりません。「親が投票に行かないから、子供も行かない」といった連鎖のようなものができているのではないかと考えています。
「SEALDsの活動には大きな意義があった」
――国政選挙としては3度目のネット選挙を迎えました。SNSなどで発信する政党や候補者も増えていますが、若い有権者はこうした動きをどう見ているのでしょうか。
中村: 若者が政治や選挙の情報をネットで得ているかというと、そうではないと思います。ネット上での選挙活動が一般化したからといって、能動的に情報をキャッチしようとする若者の数が増えたとは思えません。そういう意味では、「ネット選挙」の解禁前後で、若い有権者の動きに大きな変化は出ていないように感じています。ただ、政党や候補者の発信する情報量が急増したことで、受け手のリテラシーが問われるようになったことは確かです。
――最後に、「SEALDs」についてお聞きします。このインタビュー連載では、同じ学生団体である「ivote東京」の代表にも同じ質問をしました。その際は、「若者の政治的関心は高まったのは確かだが、政治団体に『危ない』というイメージが着いたようにも感じる」という意見を聞きました。中村さんは、SEALDsの活動について、どう考えていますか。
中村: 私はポジティブに捉えています。若者たちが自分の考えを持ってアクションしたという事実は、結果はどうであれ素晴らしいことだと思います。私達の活動とは「枠組み」が違うことは確かですが、SEALDsの活動には大きな意義があったと感じています。
中村敦信さん プロフィール
なかむら・あつのぶ 福岡県生まれ。鹿児島大学教育学部在籍。1999年設立の学生団体「学生投票率100%をめざす会」会長に16年2月就任。鹿児島県選挙管理委員会と協力し、選挙啓発活動を続けている。