今回の参院選で「ネット選挙」は3回目。その間に候補者もウェブサイトやソーシャルメディアの活用を進めてきた。今回の18歳選挙権で、どのような影響があるのか。
政治家ウェブサイト向けのコンサルティングを続けている「勝つ!政治家ドットコム」の苅部学さん(41)に聞いた。
政治家のウェブサイトは10年遅れている
――今回でネット選挙は3回目。「勝ちパターン」のようなものは見えてきましたか。
苅部: 報道各社が発表している国政選挙の出口調査によると、「ネットからの情報で最終的な投票先を決めた」などという人は2割程度にとどまっています。「ネットだけの力で勝った」という事例は、これまで知っている限りでは存在せず、ネットが勝敗を分けたというものでも、局地戦で競り合ったものなどごく一部に限られたものと言われています。 ただ今後、この2割をいかに上げていくかが、政治家や我々を含めた業界の取り組みにかかってきていると思っています。
――「2割」という割合は相当大きいように思います。
苅部: その感じ方は政治家次第です。元々地盤がしっかりしているなどでネットにまで意識が向かない人にとっては「たった2割でしょ?」といった具合です。例えばいわゆる落下傘候補と言われる方々や、取りかかりが遅かった人たちにとっては、2割は大きな数値ととらえる傾向があるように思います。そういった人は2割を「育てていこう」という思いがあるので、数年後など長期を見据えて動く人が多いです。意識が違うので日々の動きにも差がついていきます。
――18歳選挙権の影響はありますか?
苅部: 政党ごとの取り組みはあるようですが、議員個人でそこまで取り組むのは難しいのが現状です。あえて18歳、若年層に受けるからこういうことをやろう、というよりは、まずは自分(候補者本人)の年代を中心にしつつ、投票行動を起こしやすい方々を狙ってアピールすることが多い。これまでの経験上、年齢層が下がるほど選挙に反応が薄くなっていく傾向があります。同じことをするのであれば、候補者は投票に効果が高い層を狙うことが多いです。決して若年層を軽視したいわけではありませんが、どうしても反応がいい自分と同じ年代を狙いたがる人が多いのが現状です。元々若年層に向けて啓発活動をしていたような人でないと、なかなか若年層向けに特化して発信してもリターンを得るのは難しいかも知れません。
――ネット選挙が解禁された13年からの3年間で、政治家のウェブサイトやソーシャルメディアはどう変化しましたか?
苅部: 私たちは、元々一般企業にウェブコンサルティングを行ってきた企業です。そんな中で、5~6年前にある政治家からサポートを依頼されたのが今の事業のきっかけです。それをきっかけに政治家のウェブサイトの整備状況や使い方を調べてみたところ、民間よりも5~10年は遅れている、というのが当時の印象です。分かりやすくいうと、00年頃に民間で起こった「とりあえずホームページ作らないと...」という動きに、やっと政治家が追い付いた、という印象です。まだそういう状態なので、より多く使おうとする人と「今のままでいい」という人の差がある。サポートをする側としても人によって、段階が違いすぎるので、ほぼオーダーメイドの対応をすることが多いです。政治家が目標に置くことが多い選挙まで残された時間によっても対応方法は変わってくる。野球で言う「勝利の方程式」があるわけではありません。