「緑茶を飲むとダウン症改善」の研究 将来は脳機能向上の新薬に期待も

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   緑茶の健康効果は多くの研究で実証済みだが、緑茶に含まれる成分にダウン症の患者の脳機能を改善する効果があるという研究が発表された。

   ダウン症は根本的な治療法がまだ見つかっていない。すぐに治療に結びつくわけではないが、将来の新薬開発につながる可能性があるという。

  • 緑茶の成分が脳の機能向上に効果?
    緑茶の成分が脳の機能向上に効果?
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根本的な治療法はなかったが、希望が見えてきた

   この驚きの研究をまとめたのは、スペインのゲノム制御センターのマラ・ディエルセン博士らのチーム。英医学誌「ランセット・ニューロロジー」(電子版)の2016年6月号に発表された。

   ダウン症は、通常2本1対で22対ある染色体のうち、21番目の染色体が1本多く、3本あることによって発症する先天性の疾患だ。染色体が多いため、細胞内に発現されるタンパク質が多くなり、学習能力の低さや成長の遅れなど様々な障害が起こる。世界保健機関(WHO)のデータでは、1000人に約1人の割合で発症するという。

   根本的な治療は、60兆個ある全細胞から60兆個の21番染色体の過剰な1本をすべて取り除くしかないとされる。しかし、最近は、「通常より1本多い染色体の働きを抑制できれば」という方向に治療の希望が見えてきた。米マサチューセッツ工科大学が、まだ培養細胞の実験段階だが、iPS細胞(人工多機能性幹細胞)を使い、21番染色体の働きをほぼ止めることに成功している。

   スペインの研究チームが目指したのも、緑茶に含まれるポリフェノール(植物由来成分)の1つ「エピガロカテキン・ガレート」(EGCG)が、21番染色体の働きを抑制すれば、ダウン症の症状を軽くすることができる、と期待してのことだった。2014年にスイス・バーゼル大学が発表した研究で、EGCGを豊富に含んでいる緑茶を飲むと記憶力が向上するという成果が出たからだ。EGCGなど緑茶のエピガロカテキン類には、脳神経に直接届く抗酸化作用と免疫力を高める働きがあるのだ。

専門家は「緑茶に期待は楽観的すぎる」「大きな前進だ」

   そのため16~34歳のダウン症患者84人を対象に次の実験を行なった。

   (1)84人を2つのグループに分け、一方はEGCGを45%含むカフェインレスの緑茶サプリを毎日飲み、もう一方はプラセボ(偽薬)を毎日飲む。

   (2)その上で両グループともインターネットを使った同じ認知力訓練を毎週1回受ける。

   (3)実験開始から3か月、半年後、1年後に両グループとも同じ認知力テストを受ける。

   その結果は次のとおりだった。

   (1)3か月、半年後、1年後の認知力テストでは、両グループ間に大半の項目で差がないか、あってもごくわずかだった。

   (2)しかし、視覚の記憶パターンや言葉から連想する能力、適応行動などいくつかの項目で、緑茶グループの成績が著しく高かった。また、それらの項目は3か月、半年後、1年後と時間の経過ともに向上する傾向が見られた。

   (3)両グループの脳スキャンから、緑茶グループの脳神経細胞の結合は、プラセボグループより増加していた。こうした効果は、実験を終了した後も半年間持続した。

   こうした結果から、ディエルセン博士は「劇的な改善効果があったとは言えませんが、視覚の記憶や言葉の能力、脳の神経細胞の連携などに改善が見られたのは確かです。ダウン症の人々の症状を軽くする薬物療法の道が開けたと思います」とコメントしている。

   今回の研究に対し、専門家たちは様々な見方を示している。2014年に緑茶に記憶力アップ効果があることを発見したスイス・バーゼル大学のシュテファン・ボルクバト教授は、CNNの取材に対し、「現時点で緑茶にダウン症の治療効果を期待するのは楽観的すぎる。効果が不明だし、患者の症状は多岐にわたるから、患者にとって完全に適切な薬になるかどうかわからないからだ」と語る。フランスのパリ脳・脊髄研究所のダウン症の専門家は、AFP通信の取材に対し、「大きな前進だ」と評価しつつ、「まだ安全性と有効性の確認が必要だ」と語っている。

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