専門家は「緑茶に期待は楽観的すぎる」「大きな前進だ」
そのため16~34歳のダウン症患者84人を対象に次の実験を行なった。
(1)84人を2つのグループに分け、一方はEGCGを45%含むカフェインレスの緑茶サプリを毎日飲み、もう一方はプラセボ(偽薬)を毎日飲む。
(2)その上で両グループともインターネットを使った同じ認知力訓練を毎週1回受ける。
(3)実験開始から3か月、半年後、1年後に両グループとも同じ認知力テストを受ける。
その結果は次のとおりだった。
(1)3か月、半年後、1年後の認知力テストでは、両グループ間に大半の項目で差がないか、あってもごくわずかだった。
(2)しかし、視覚の記憶パターンや言葉から連想する能力、適応行動などいくつかの項目で、緑茶グループの成績が著しく高かった。また、それらの項目は3か月、半年後、1年後と時間の経過ともに向上する傾向が見られた。
(3)両グループの脳スキャンから、緑茶グループの脳神経細胞の結合は、プラセボグループより増加していた。こうした効果は、実験を終了した後も半年間持続した。
こうした結果から、ディエルセン博士は「劇的な改善効果があったとは言えませんが、視覚の記憶や言葉の能力、脳の神経細胞の連携などに改善が見られたのは確かです。ダウン症の人々の症状を軽くする薬物療法の道が開けたと思います」とコメントしている。
今回の研究に対し、専門家たちは様々な見方を示している。2014年に緑茶に記憶力アップ効果があることを発見したスイス・バーゼル大学のシュテファン・ボルクバト教授は、CNNの取材に対し、「現時点で緑茶にダウン症の治療効果を期待するのは楽観的すぎる。効果が不明だし、患者の症状は多岐にわたるから、患者にとって完全に適切な薬になるかどうかわからないからだ」と語る。フランスのパリ脳・脊髄研究所のダウン症の専門家は、AFP通信の取材に対し、「大きな前進だ」と評価しつつ、「まだ安全性と有効性の確認が必要だ」と語っている。