高齢者がよく使っている遠近両用の2焦点や、境目がなくどこにでも焦点が合う累進多焦点レンズのメガネは、足元の視界がぼやけて転倒やつまずきの危険性が非常に高いことがわかった。
オーストラリア・クイーンズランド工科大学のチームが、眼科と検眼の専門誌「Optometry and Vision Science」の2016年6月号に発表した。
「遠近両用」は階段で足元がぼやけて危険
研究では、平均年齢72歳の高齢男女19人の協力を得て、焦点が1つの「普通のメガネ」と2焦点や累進多焦点の「遠近両用メガネ」をかけた状態で、階段や段差、狭い通路やクネクネと曲がった道路など、様々なコースを歩いてもらい、正確で安全な歩行動作ができたかどうかを比較した。
その結果、両方のメガネとも転倒するなどの事故は起こらなかったが、「遠近両用メガネ」をかけた場合は、コースから外れそうになったり、階段や段差の上り下りなどで足を滑らせそうになったり、つまずきそうになったり、スムーズに歩くことができない場面が多かった。特に危険が増したのは、高齢者が足を踏み出す場所より、前方を見ている時だった。「遠近両用メガネ」は焦点の中心から外れる周囲の部分がぼやけるので、足元が見づらいのである。
同大学のアレックス・ブラック教授は「今回の研究は、高齢者が足元をよく見る必要があること、普段から足元の注視トレーニングを積んでいるとよいことを改めて教えてくれました。よく外に出る活動的な高齢者は、焦点が1つのレンズのメガネをかけるべきです。階段や段差があるなど、正確な足さばきが必要な場所では、多焦点レンズのメガネは転倒リスクが非常に高くなります」と語っている。