東京都豊島区にある「造幣東京博物館」から、時価6384万円相当の金塊を盗んだ容疑で、硬貨などを製造する、独立行政法人造幣局の東京支局に勤務する54歳の男が逮捕された。
職員の逮捕を受けて、造幣局は2016年6月20日、大阪・本局と東京支局でそれぞれ記者会見し、「職員による不祥事が発生したことは痛恨の極みであり、心から深くお詫びします」と陳謝。管理体制が不十分だったとの認識を示し、「再発防止に万全を期す」と話した。
「FXの損失補てんのため」と供述
埼玉県警は、造幣局東京支局の総務課専門官で、さいたま市西区に住む54歳の男を窃盗容疑で逮捕したと、2016年6月20日に発表した。男は16年1月5日、造幣東京博物館(東京都豊島区)で一般公開用に展示されていた時価6384万円相当(1月5日時点の1グラムあたり4109円で計算)の金塊を盗んだとの疑いがもたれている。
盗んだ金塊の大きさは、縦20センチ×横10センチ、高さ6センチ。重さは約15キログラムと、持ち運ぶにはかなり重たい。
警察の調べに、男は容疑を認めており、動機について「FX(外国為替証拠金取引)で出した損失補てんのために盗んだ」などと供述。さいたま市内の質店で、金塊を現金に換えたという。金塊は質店で見つかっており、現在は大宮西署が保管、管理している。
6月21日、造幣局の担当者に話を聞くと、男は1980年に入局。「ふだんの勤務態度に問題はなかった」という。男は広報や博物館にある展示物のイベントなどへの貸し出しの担当で、「『仕事で貸し出す』と言って、部下に展示ケースから出すよう指示したようです」と話す。貸し出しに必要な総務課長の許可を得ていなかったほか、「外部に貸した事実もありませんでした」という。
男が持ち出したあと、ケースの中には博物館所有の金塊のレプリカが置かれていて、「貸出中」の表示を掲出していたため、「持ち出したのがわからなかった」と説明する。造幣局では6月に入って、金塊がなくなっていることに気づいた。じつは造幣東京博物館は、造幣局東京支局が16年10月に、さいたま新都心に移転するのに伴い、6月末で閉館、移転することが決まっていた。「移転に伴い、貸出中の貨幣や資料などを確認する作業を進めていたこともあります」と話す。
内部調査で男が持ち出していたことがわかり、別の職員が「早く返してほしい」と催促していたが、男は6月15、16日に無断欠勤。17日には行方不明になっていたため、造幣局が大宮西署に相談していた。
ちなみに、「造幣局の職員だからといって、FXを禁止しているわけではありません」と話している。
「質屋も6000万とか、よく引き受けたな・・・」
この事件に、インターネットには、
「15キロって、相当重いよな・・・ こんなん抱えて怪しまれないほうが不思議」
「バレないとでも思ったのかな。もはやまともな判断能力も失ってたんだろうな」
「金塊を展示会に使うとか、よく考えたな。金塊を担保に金を借りて、数か月後に大金が入ったら元に戻す。スゴい技だわwww」
「造幣局で54歳なら、もう少しで定年で退職金で補てんできたろ。おそらくは懲戒免職。バカだねぇ・・・」
といった声に混じって、
「FXの強制退場を乗り切ったらすぐ返すつもりだったのかな・・・」
といった、動機になった「FX」に反応する声や、
「質屋が通報しないのって、おかしくないか? 転売した時点で発覚するんじゃね」
「質屋はこの金塊に幾ら出しんだろ。すっごく、気になる・・・」
「質屋も6000万とか、よく引き受けたな。どうせ使っちゃったんだろうけど、カネは戻ってくるのかな...」
と、質屋への興味も尽きないようだ。
「持ち出せるような管理に驚くわ。日本、大丈夫かよ」
と、造幣局の管理を問題視する向きもある。
そもそも、他人にわからないように金塊を売買するのは、そんなに簡単ではない。個人が金塊を売れば、「譲渡所得」として税金がかかるし、それが一定金額以上の売買となれば、取り扱った貴金属店なども申請が必要になる。
また、金塊には「刻印」があるものとないものがあり、造幣局によると、刻印には重さや製造年度と番号などが記載されていて、刻印のない金塊は不正に取引された「ウラ市場」のもので、流通している金塊は「国際的なルールに則ったもの」という。
造幣局は「金塊には『造幣局』の刻印が必ずあります。もし、これ(盗まれた金塊)が貴金属店に持ち込まれていたとしたら、貴金属店のほうが怪しんで警察に通報していたと思います」と説明。それもあって、男が質店に持ち込んだと推測される。
埼玉県警は、男が質店に金塊の入手経路をどう説明したのか、またいくら受け取ったのかなどの詳細は、「現在、捜査中なのでお話しできません」としている。金塊が造幣局のもとに戻るのも、しばらく時間がかかりそうだ。