毎夏恒例の音楽イベント「FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)」が2016年も開催される。今年は20回目のアニバーサリーイヤーとあり、開催が約1か月後に迫る中、参加者のボルテージも日に日に高まっている。
そうした中、先日発表された出演者の中に学生団体「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基さんの名前があったことが、インターネット上で物議を醸している。
「自然と音楽の共生」を目指し、今年で20回目
フジロックは、毎年200組を超える国内外の有名アーティストが集結する日本最大級の野外ロックフェスティバル。「自然と音楽の共生」を目指し、1997年に山梨県の天神山スキー場で初開催され、99年以降は現在の開催地である新潟県の苗場スキー場で行われている。
第20回目を迎える2016年は、7月22日~24日の3日間にわたって開催される(21日に前夜祭)。出演者は2月の第1弾発表を皮切りに続々と明らかになり、6月17日には第10弾が発表されたのだが、今回はいつもと異なる反応がネット上に相次いだ。
出演者の中に、安全保障関連法に反対する抗議行動をリードしてきた「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)」の中心メンバー、奥田さんの名前があったためだ。
2015年、国会前のデモでマイクを取り「安倍はやめろ」とラップ調でコールしていた奥田さんの姿は記憶に新しい。9月には参院平和安全法制特別委員会の中央公聴会で、公述人の1人としてスピーチし、大きな注目を集めた。
ネット上では、奥田さんの名前が出たことに敏感に反応する人が続出した。
「最悪、政治活動の場になったか」
「音楽フェスに政治を持ち込むな」
「政治と音楽を混ぜるのは音楽に対して冒涜以外何者でもない」
など、批判的な意見がいくつも寄せられた。
「フジロックはもともとそういうイベント」
しかし、奥田さんは今回、ミュージシャンとして出演するわけではない。「No Nukes! No War!」を掲げたイベント団体「アトミック・カフェ」が行うトークイベントにジャーナリストの津田大介さん、国際環境NGO「FoE Japan」の吉田明子さんとともに出演する。トークテーマは「参院選を振り返る。安保法制、沖縄、憲法、原発」だ。
「アトミック・カフェ」は、もともと80年代に盛り上がりをみせた反核・脱原発イベント。90年代に一旦終了したが、東日本大震災のあった2011年、フジロックの会場内で復活した。
以来、フジロックでは毎年開かれており、脱原発派として知られる歌手の加藤登紀子さんは同イベントの常連だ。過去には、反原発ソングで話題になった斉藤和義さんや、日頃から政治的発言の多いロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」(アジカン)の後藤正文さん、ジャーナリストの田原総一朗さんらが出演している。
こうした経緯もあり、今年になって、突然政治色が強まったわけではない。ただ、奥田氏の放つ印象は強かったようで、例年より反響が大きくなった側面がある。
音楽評論家の小野島大さんは20日、ツイッターで
「フジロックに政治を持ち込むなという意見があるようだが、フジロックはもともとそういうイベントであって、今年いきなりそうなったわけじゃない。そういうことを言う人はフジロック行ったことのない人ですよね」
と指摘。アジカンの後藤さんも同日、
「フジロックに政治を持ち込むなって、フジロックのこと知らない人が言ってるよね。これまでいくつものNGOやアーティストがさまざまな主張をステージて繰り返してきたわけだし」(原文のママ)
とツイッターで批判に反論し、「『読経に宗教性を持ち込まないでください』みたいな言説だよね」と例えてみせた。
奥田氏「ただやりたいこと、やれることやってるだけ」
同イベントで毎年司会を務めている津田さんも「フジロックはそもそも環境保護とかそういうのを打ち出してる『政治的』なフェス」(18日ツイート)との見解を示す。その上で「音楽以外にも触れた方がより音楽楽しめるようになるかもですよ」とした。
運営元は奥田さんの起用について、どのようにとらえているのだろうか。J-CASTニュース編集部は20日、フジロック主催会社とアトミック・カフェに起用理由についてのコメントを求めたが、18時時点で回答は得られていない。
なお、奥田さんはネット上の批判を受けてか、20日、自身の思いをツイッターでこうつづった。
「別に、政治家でもないし、ロックでもないし、ラップもやってないし、アーティストでもない。呼ばれたら行くし、ただやりたいこと、やれることやってるだけ。話すだけだし。8月で解散」(編注:SEALDsは参院選後に解散するとしている)