高い「介入のハードル」
しかし、介入のハードルは極めて高い。米国のルー財務長官は為替市場の現状について「おそらく(一部の国にとって)好ましくないだろうが、秩序的だと思う」(6月5日、北京での講演)と、介入に値しない意味の「秩序的」という単語を使い続けており、主要7か国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の際の日米首脳会談で、オバマ大統領自ら為替への介入をけん制したとの情報もある。オバマ政権がレガシー(遺産)として重視する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の議会での批准に向け、他国の通貨安政策で米企業が不利益を受けて雇用喪失につながるとの議会の懸念を考えると、日本の為替介入を容認できないのだ。
米国の理解がない中で、「日本は事実上、為替介入できなくなっている」(国際金融筋)との声もある。
目先の最大の注目点は、6月23日に迫った英国のEU離脱の是非を問う国民投票だ。世論調査で賛否が拮抗するが、離脱となれば、外為市場はリスク回避で英ポンドやユーロ売りに流れ、欧州株価も落ち込む懸念があり、相対的に安全な通貨とされる円が買われて円高が加速する可能性が高い。日銀が6月の金融政策決定会合で追加緩和を見送ったのも、「英EU離脱になれば緩和効果が失われかねないリスクがあったため」(エコノミスト)と指摘される。
参院選に向け、政界では金融政策への関心がやや後退している。野党が「マイナス金利は撤回させる」(民進党)と批判を強めるのは当然だが、自民党も参院選公約から「大胆な金融緩和」を削除し、「マイナス金利への反発も考慮して、政府・与党はアベノミクスの軸足を財政出動に移しつつある」(全国紙経済部デスク)といわれる。ただ、「円高への懸念は別」(同)。特に、英国でEU離脱が勝つような場合、英ポンドとユーロが暴落、円相場は対ドルでも1ドル=100円を突破し、90円台の円高に突入する可能性も取沙汰される。
英EU離脱の場合、先進7か国の協調によるドル供給など外為市場、金融市場の安定に努めることになるとみられるが、円高に歯止めがかからなければ、改めて日本当局による介入が現実味を帯びる局面も予想される。その場合、米国を説得できるのか、そもそも介入で円高が止められるのか、国際市場の動きが日本の株価にどこまで影響するか。
逆に英国がEU残留になっても、欧州通貨安の傾向が容易に反転するとの見方は少ない。
日本としては、参院選への影響のプラス・マイナスも測りながらの政策判断になりそうだ。