麻薬並みの快楽ホルモンで「いいね!」中毒に
もう1つ研究チームが危惧するのは、「いいね!」を受けとれば受けとるほど「ほめられている」「人気を集めている」という満足感が高まり、「報酬回路」が活発化した点だ。「報酬回路」はマラソンを完走したり、長期プロジェクトを成し遂げたりした後などに刺激が多くなる。そのほうびとして快楽ホルモンのドーパミンをもらい、それが次の行動への意欲につながる。
ところが、SNSの場合は、「いいね!」を押すだけの非常に小さな労力ですぐさま報酬が与えられる。「パブロフの犬」のようにクリックを押し続ける「いいね!中毒」になる心配があるという。
サルの脳の報酬回路に電極を入れた実験では、サルがボタンを押すと電流が流れてドーパミンが分泌されるようにすると、サルはとめどなくボタンを押し続けた。それほどドーパミンの刺激は強いのだ。覚せい剤やモルヒネ中毒患者もこのドーパミンの過剰分泌が明らかになっている。
最近、SNSに料理の写真を投稿する女性が増えているが、食事写真を投稿したり見続けたりすると肥満になるという研究がある。カナダ・トロント大学の精神病医学者ヴァレリー・テイラー博士が2013年5月、米国肥満学会で、自分が診てきた患者の経験から「SNSに食事の写真を投稿する行為は、摂食障害につながる危険性がある」と警告した。
テイラー博士は「毎回毎回、食事のたびに写真をアップしている人は、見ている人をうんざりさせるばかりか、自分が深刻な心理状態に追い込まれていることを認識する必要があります。食事の写真を撮ることが最優先課題になり、食事の内容、栄養、量を考えなくなり、過食や拒食症になる可能性があります」と述べた。
また、食事写真を見すぎることも健康に悪影響を与えると指摘した。豪華で美味しそうな写真ばかり見ると、食欲がわき、つい小腹を満たそうと余計な間食をする。逆に、写真を見ただけでお腹がいっぱいになり、食欲がなくなる人もいる。いずれにしろ、過食症や拒食症になる心配があり、体にいいことは何もないというわけだ。