東京で「領土争い」 五輪の大義で解決可か

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   東京湾の中央部に位置する埋め立て地「中央防波堤埋立処分場」の帰属をめぐり、東京都の大田区と江東区による協議が正式に始まった。両者は「誠意を持って協議を進める」ことを確認したと説明する。長年続いてきた「領土争い」は、中央防波堤の一部が2020年東京五輪の競技会場になったことから、決着させようという気運が高まっているのは間違いない。ただ、双方の言い分の隔たりは大きく、都知事に「自治紛争調停」を申請することになるのは必至の情勢。16年7月31日の知事選で選ばれる新知事の判断にゆだねられることになりそうだ。

   中央防波堤はお台場の南東にあり、面積は約509ヘクタール。1973年に都のゴミの埋め立てが始まり、1996年に内側の埋め立てが終わった。当初は、中央、港、品川の3区も「領有権」を主張したが、2002年に取り下げ、今は江東区と大田区が、それぞれ「100%自分に帰属する」と主張し、ガチンコで争っている構図だ。

  • 長年の懸案となっている(写真はイメージ)
    長年の懸案となっている(写真はイメージ)
  • 長年の懸案となっている(写真はイメージ)

中央防波堤埋立処分場の帰属めぐり大田区VS江東区

   双方の主張を整理すると、まず、江東区は、同区側から先にトンネルで結ばれ、1988年に5区が結んだ事務処理の覚書で埋め立て地を「江東区地先」としたといった実績を踏まえ、埋め立てに使ったごみの焼却灰や建設残土などの大半が江東区を通って運ばれ、渋滞や騒音の被害も被ってきたことを訴える。一方の大田区は、江東区と同様に今は海底トンネルで中央防波堤と結ばれており、現場海域ののり養殖の漁業権を放棄した経緯を挙げ、具体的に漁業権放棄の際に都が漁協に支払った補償金額の比率が大田区9に対し江東区1だったことなどを指摘するとともに、羽田空港と一体的に活用する意義も強調している。

   2016年4月下旬、都庁の会議室で両区の部長級が出席して協議が行われた。都に調停を申請した場合の事務局となる都の区政課員も同席。同課は「話し合いで合意することを期待している」として、協議をサポートする考えだが、スンナリ、合意すると考える関係者はいない。

   協議に向け、大田区議会が3月に「全島帰属」を求めて決議し、江東区が反発。大田区は6月1日付の区報「おおた」で特集記事を組み、帰属を求める正当性をアピールするなど、序盤戦で早くもヒートアップ気味で、「両区が全島帰属を譲る可能性は少ない」(5月18日、江東区の山崎孝明区長)、「調停が粛々と行われることが望ましい」(5月19日、大田区の松原忠義区長)と、都の調停に委ねられるのは確実だ。

   調停は地方自治法に定められた手続きで、自治体間の境界紛争が起きた場合、地方自治法は知事権限で自治紛争処理委員による自治紛争調停に付すと定めている。もちろん、調停内容に不満の場合は訴訟も提起できる。

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