深刻な人手不足が続いている外食業界にあって、ハンバーガーチェーン大手の「マクドナルド」が「わたしと一緒に働きませんか」などと、店頭でお客をスカウトしていると、インターネット上で話題になっている。
店舗運営について、日本マクドナルドホールディングス(HD)は「現時点で(アルバイト・パートの)人数は足りています」と話し、深夜帯などを含め、どの店舗も十分な体制で運営できているという。
「業績回復を成し遂げる1年」で「クルー」を積極採用
外食業の人材不足は深刻で、マクドナルドも例外ではないようだ。経済系のニュースサイトのビジネスジャーナル(2016年6月14日付)によると、マクドナルドが、アルバイトが集まらないため、店頭でお客に「『一緒に働きませんか』とスカウトしている」と報じた。
J‐CASTニュースが事実を確認したところ、日本マクドナルドHDの広報担当者は6月17日、店頭でのこうしたお客へのアルバイトの勧誘について「よくあることで、もう何年も前から取り組んでいます」と回答した。
ただ、店頭での「スカウト」を含め、「今年は積極的に採用活動に取り組んでいます」ともいう。
日本マクドナルドHDの2016年5月の売上高(既存店ベース)は、前年比21.3%増で6か月連続のプラス。客数も5か月連続増となる7.0%増、客単価も6か月連続増の13.3%増となり、回復基調が鮮明になってきた。
アルバイト・パートのスタッフである「クルー」が十分に確保できないと、深夜帯の営業時間を短縮したり、社員のマネージャーや店長が店舗に出て対応したり、他のクルーの負担が重くなったり、仕事に支障をきたす恐れが懸念される。
同社は、「今年は業績回復を成し遂げる1年。そのためには多くのクルーが必要です。クルーの採用は重視していますし、積極的に取り組んでいます」と説明する。
3月からは「クルーになろう」のキャッチコピーと、アイドルグループのAKB48とのコラボによるアルバイト募集のアニメを公開。「クルーの仕事を、理解してもらう活動に積極的に取り組んでいます」と話す。
時給を比較してみると
一方、外食業の人手不足の原因のひとつは、「低賃金」にあるとされる。人材情報のリクルートジョブズによると、2016年4月のアルバイト・パートの募集時の平均時給は、東京・名古屋・大阪の3大都市圏の場合で、前年同月比16円増の977円。首都圏では1018円と、1000円を超えていた。
職種別でみると、事務系や営業職、看護師や塾の講師などの専門職の時給が1000円を超えるなか、外食業(フード系)は全体で952円。なかでも、ファストフードは938円と低い。時給比較では、魅力的とはいえそうにないことが分かる。
そうしたなか、マクドナルドの時給は、たとえば6月17日現在で募集中の東京・中野セントラルパーク店は、東京都の最低賃金にあたる「907円以上」だった。高輪ウイング店や早稲田駅前店などでは「950円以上」、西新宿駅前店は「1000円以上」(高校生は950円以上)。また、さいたま市の大宮本郷店は「850円以上」(埼玉県の最低賃金は820円)だった。
マクドナルドの場合、2014年7月に起った中国での期限切れ鶏肉の使用や、その後の商品への異物混入問題で、同社の企業イメージそのものが大きく毀損した。また、外食産業に対しては、全般的に「長時間労働」などの「ブラック」なイメージを持つ人も多く、人手不足を助長している側面もある。最近はアルバイトも売り手市場で、「条件のよい店」でなければ働き手が集まりにくいこともある。
若者の人手不足の影響で、最近は外食業やコンビニエンスストアなどでも、主婦層やシニア層のアルバイト・パートが目立つ。日本マクドナルドHDでも積極的に採用しており、「重要な戦力」という。
「当社の入れ替え率は少ないと認識」
店頭での「スカウト」の話題に、インターネットでは、
「これはワロタ。突然『いっしょに働こう』って、あやしいだろwww」
「ナンパか? www」
「『わたしと一緒に働きませんか?』と言わされるうえに、人手不足で低賃金の飲食店で働きたいだろうか・・・」
「結局は金だ。人手不足というなら時給2000円にしろ」
などと手厳しい声が寄せられるが、なかには、
「これ、スカウトされた場合は採用決定なの? その後に履歴書で書類審査とか、面接で不採用とかないの?」
「マックであの制服を着て働くのは、昔は高校生の憧れだったんだよ」
といった、興味を示す声がないわけではない。
最近は、若者がアルバイト先として「外食業」を避ける傾向にあるとの指摘もあるが、日本マクドナルドHDは、「アルバイトが働きやすく、楽しく、毎日、そして長く働いてもらうことが大切だと考えています。学生は学業があるので入れ替えがありますが、それでも当社の入れ替え率は少ないと認識しています」と話している。