ペットが病気やけがをした際の医療費の一部を補償する「ペット保険」の契約者が広がっている。ペットを家族同様にして暮らす家庭が増えていることや、保険の種類が多様化していることが背景にあるとみられる。将来は現在の約5倍に当たる2000億円規模の市場に成長するとの期待も高まっている。
犬や猫は人間のように公的な健康保険制度がなく、ペット保険は民間の損害保険会社や少額短期保険会社の一部が扱っている。ペットが病気やけがで動物病院に通ったり、入院や手術をしたりした場合に、医療費の50%や70%を保険金として支払う商品が多い。保険期間は一般的に1年で掛け捨てタイプ。対象のほとんどは犬と猫で、一部にはフェレットなど他の小動物を扱うものもある。
保険料を低く抑える商品も
そんなペット保険はここ数年、契約数が増加している。調査会社の富士経済によれば、2015年末の保険契約件数は約106万5000件で、前年末(約95万6000件)から1割以上も増えた。富士経済は17年末の契約件数は15年末比26.3%増の約134万5000件に拡大すると見込んでいる。
保険業界関係者によれば、ペット保険の契約が増えている要因の一つは、人とペットの親密度が高まっていることだ。犬なら、かつては家の外の小屋で飼い、えさは人間の食べ残しを与えたものだが、最近は室内で飼うケースが多く、栄養価の高いペットフードなどを与えている。こうした環境の中、ペットの寿命は延びているが、加えて、獣医療の技術も年々向上。がんを患った場合、抗がん剤治療を行うこともあり、飼い主が負担する治療費も増加傾向にある。
そんな需要を見込んで、ペット保険にはここ数年、さまざまなタイプが登場している。ペット保険はおおよその場合、保険料が年間3万~8万円程度で、ペットが年を経れば10万円を超える場合もある。これまで契約数がなかなか広がらなかったのは、保険料が高いことが大きな理由とされる。しかし、最近は、補償の対象を入院と手術だけに限定し、通院の場合は対象外にするなどの工夫で、保険料を低く抑える商品も出てきた。最も低いケースでは年間1万円前後に押さえられることもある。
国内の普及率は現在5%程度
もちろん、保険料が比較的高く、通院も補償される保険に契約しておけば、ペットが風邪をひいたりして体調が悪い時でも手軽に病院に連れていけるなどのメリットもある。それぞれの保険で一長一短はあるものの、保険料が低い商品があれば、飼い主がペット保険の活用に一歩を踏み出すきっかけにもなり、「ペット保険の認知の広がりにも一役かっている」(業界関係者)と前向きな声も多い。
国内のペット保険の普及率は現在5%程度。英国では15~20%に達しているといい、国内でも一段と普及していきそうだ。