「まな板の上の鯉」
また、折しも夏の人事異動で農林水産省の新事務次官に、農協改革を手がけたことで「改革派」と目される奥原正明経営局長が就任することになった。奥原氏は前任の本川一善氏と同期(1979年)入省。霞が関の常識から言えば、同期の次官が続くことは自然な流れではないため、安倍政権の強い意向が反映されたとみられている。自民党の小泉部会長だけでなく、政府側も支持率維持のためにも農業を何らかの「改革」でもう少しかき回そうとする狙いが透ける。
農林中金としても「まな板の上の鯉」になりそうな気配を察し、小泉部会長への回答として出してきたのが今回の新たな出資枠なのだろう。「川下(産業界)」の支援先は、農薬などの資材を扱う企業とみられる。近年、農協から農家に販売する資材価格が高いことが問題視されているだけに、より安価な農薬などの流通を促すことにつなげたいようだ。参院選前ということもあってか、小泉部会長や政権から農林中金の新融資枠について表立った反応はみられないが、参院選後に新たなバトルのタネとなる可能性もある。