辞職を表明した東京都の舛添要一知事が繰り返した「第三者の厳しい目」に続いて、「第三者委員会」のあり方に対する国民の信頼が改めて失われることになりそうだ。
舛添氏の政治資金をめぐる調査では、事実認定が「舛添知事寄り」だとして批判を受けたばかりだが、この調査を担当した「マムシの善三」こと東京地検特捜部出身の佐々木善三弁護士は原発事故関連の東京電力の第三者委員会にも参加していた。その調査結果では、炉心溶融(メルトダウン)の認定をめぐって清水正孝社長(当時)が官邸から「慎重な対応をするようにとの要請を受けたと理解していたものと推認される」と結論付けているが、「権限がない」などとして当時の官邸メンバーにはヒヤリングしないまま導かれた結論だったからだ。当時の官邸メンバーは「第三者委員会と称して、第三者性があるかのごとく印象付けているのは、はなはだ不誠実」(枝野幸男・元官房長官)などと激怒している。
東電が炉心溶融を伏せたのは「官邸の要請」を受けたと推認
2016年6月6日に行われた舛添氏の政治資金をめぐる会見では、調査対象から依頼されて行う調査で中立性が保たれるのか、といった質問に対して、佐々木氏は不機嫌そうに
「第三者委員会とは基本的にそういうもの」
と答え、「上から目線」だとして不興を買ったという経緯がある。6月16日に開かれた東電第三者委員会の会見でも、似たようなやり取りが繰り返された。
この日発表された調査報告書では、東日本大震災発生から3日後の11年3月14日夜の記者会見で、会見に臨んでいた武藤栄副社長(当時)に対し、清水社長が広報担当社員を通じて「炉心溶融」などと記載された手書きのメモを渡させ、「官邸からの指示により、これとこの言葉は使わないように」などと耳打ちさせたとされている。報告書では、こういった経緯を根拠に、
「この事実からすれば、清水社長が官邸側から、対外的に『炉心溶融』を認めることについては、慎重な対応をするようにとの要請を受けたと理解していたものと推認される」
と結論付けた。読み方によっては、官邸が「炉心溶融隠し」を指示していたともとれる。
しかし、当時の官邸側の言い分を聞かないまま、一方的に東電側の言い分が採用された形になっており、記者会見で、この点を指摘された第三者委員会の田中康久委員長は
「調査権限が限られている」
とした上で、
「そこまでやると時間がかかる。官邸等からの事情の聞き取りは他の委員会ですでにやっていたので、一応、その結果をある程度踏まえた上でやれると(判断した)」
などと釈明した。その隣の席には、第三者委員の1人である佐々木弁護士が座っていた。