電車やバスの「居眠り運転」が怖い 突如意識失い重大事故につながる

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   東京西部と埼玉、千葉を結ぶJR武蔵野線で2016年6月13日、40代の男性運転士が一部区間を制限速度の2倍で走行する「事件」があった。原因は、運転士が「意識もうろうとしていた」ためとみられる。

   電車の運転中に意識が遠のくようでは、利用者にとっては不安この上ない。運転士は睡眠時無呼吸症候群の治療中だったという。

  • 首都圏を走るJR武蔵野線
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バス運転手が睡眠時無呼吸症候群を発症し大惨事

   武蔵野線の運転士は、徐行区間で時速35キロに制限されていたところを時速69キロで走った。一時的に意識がもうろうとしたがすぐに気づいて非常ブレーキをかけた。乗客にけが人は出なかった。

   JR東日本では2016年2月26日、山手線の田端-大崎の16駅間で男性運転士が居眠り運転し、インターネット上には運転士が操作レバーを握りながら体を揺らして寝ている様子の動画が拡散した。同社の冨田哲郎社長は5月10日の定例会見で謝罪した。ところが5月16日、今度は成田エクスプレスが東京駅に到着後、30秒間ドアが開かないトラブルが発生。男性車掌の居眠りによるものだったという。

   単なる気の緩みかもしれないが、武蔵野線の運転士のように睡眠時無呼吸症候群であれば、検査や治療が必要となる。

   睡眠時に舌が喉の奥に沈下して気道をふさぎ、呼吸が止まったり弱くなったりを繰り返すのが、睡眠時無呼吸症候群だ。大きないびきをかき、息苦しくて目が覚める、昼間に強い眠気を感じるといった症状が出る。しっかりとした睡眠が確保されておらず、疲労感が続くのも特徴で、最悪の場合は突然意識を失う。

   睡眠時無呼吸症候群の発症が悲惨な事故につながったとみられるケースは、過去にある。2012年4月、群馬県の関越自動車道を走行中のツアーバスの運転手が居眠りし、防音壁に衝突。45人が死傷する大惨事となった。事故後、運転手が睡眠時無呼吸症候群だと診断された。2015年1月には東京都大田区で、路線バスが電柱にぶつかり、乗客19人が重軽傷を負った。国の事業用自動車事故調査委員会は、運転手が睡眠時無呼吸症候群だったにもかかわらず検査を受けなかったため、運転中に発症したとの報告書をまとめた。

パイロット並みの「身体検査」が運転手にあれば

   長距離を運転するドライバーにとっても、睡眠時無呼吸症候群は大敵だ。全日本トラック協会では、2005年からこの病気のスクリーニング検査の助成を行っている。これは運転手が、精密検査が必要かどうかを判断するための簡易検査だ。自宅で睡眠時に検査器具を装着して計測した後に、器具を検査機関へ提出する。検査の結果、精密検査が必要かどうか通知される。国土交通省では運送事業会社に向けて、スクリーニング検査で「要精密検査」となったドライバーが必ず検査を受け、結果を管理者に報告する社内ルールをつくるよう促している。

   今後さらに踏み込んで、バスやトラックの運転手が脳のMRI(核磁気共鳴画像法)や睡眠時無呼吸症候群の検査を受けるよう事業者に義務づける動きも、国会議員の間では出ている。ただし、高額な受診費用が課題のようだ。

   航空業界では、パイロットが年に1回の「航空身体検査」を受ける。内科、眼科、耳鼻咽喉科、精神神経科について専門医が厳しくチェックする。航空医学研究センターのウェブサイトにある検査マニュアルを見ると、検査項目は呼吸器系、循環器系、消化器系、血液、腎臓・泌尿器系、運動系、精神神経系、眼、耳鼻咽喉系など幅広く、ほかにも腫瘍や感染症、アレルギー疾患も検査される。睡眠時無呼吸症候群を含む睡眠障害も対象項目で、問診のほか専門的な測定検査が行われる。

   鉄道はじめ乗り物の運転業務に従事する場合、大勢の命を預かる立場になる。今後、より厳密に睡眠時無呼吸症候群の検査や治療が徹底して施されるようになれば、利用者の安心が高まるはずだ。

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