パイロット並みの「身体検査」が運転手にあれば
長距離を運転するドライバーにとっても、睡眠時無呼吸症候群は大敵だ。全日本トラック協会では、2005年からこの病気のスクリーニング検査の助成を行っている。これは運転手が、精密検査が必要かどうかを判断するための簡易検査だ。自宅で睡眠時に検査器具を装着して計測した後に、器具を検査機関へ提出する。検査の結果、精密検査が必要かどうか通知される。国土交通省では運送事業会社に向けて、スクリーニング検査で「要精密検査」となったドライバーが必ず検査を受け、結果を管理者に報告する社内ルールをつくるよう促している。
今後さらに踏み込んで、バスやトラックの運転手が脳のMRI(核磁気共鳴画像法)や睡眠時無呼吸症候群の検査を受けるよう事業者に義務づける動きも、国会議員の間では出ている。ただし、高額な受診費用が課題のようだ。
航空業界では、パイロットが年に1回の「航空身体検査」を受ける。内科、眼科、耳鼻咽喉科、精神神経科について専門医が厳しくチェックする。航空医学研究センターのウェブサイトにある検査マニュアルを見ると、検査項目は呼吸器系、循環器系、消化器系、血液、腎臓・泌尿器系、運動系、精神神経系、眼、耳鼻咽喉系など幅広く、ほかにも腫瘍や感染症、アレルギー疾患も検査される。睡眠時無呼吸症候群を含む睡眠障害も対象項目で、問診のほか専門的な測定検査が行われる。
鉄道はじめ乗り物の運転業務に従事する場合、大勢の命を預かる立場になる。今後、より厳密に睡眠時無呼吸症候群の検査や治療が徹底して施されるようになれば、利用者の安心が高まるはずだ。