京都府立朱雀高校(京都市中京区)が、妊娠した女子生徒に「体育」の実技授業を受けるよう説明していた問題が波紋を広げている。当初休学を勧めた学校側がこうした対応を取ったのは、女子生徒が同級生との卒業を望んだためだ。学業と出産・子育ての両立は難しい面もあり、その後、女子生徒は休学を選択した。
一方、問題が報じられると「なぜ柔軟な対応ができないのか」といった批判がネットで飛び交った。府教育委員会は「学習指導要領に沿った対応でも、配慮できるはずだ」と説明するが...。
持久走を要求したことは「絶対にない」
学校の説明などによると、妊娠が発覚したのは2015年8月ごろ。同年11月ごろ、生む決意を固めた女子生徒に対し、学校側は母子の安全を考えて休学を勧めた。しかし、女子生徒は首をたてに振らなかった。その際、学校側は体育の授業を欠席しがちだった女子生徒に、卒業するうえで「体育の実技補習が必要になる」という趣旨の説明をしている。一般的に、「体育実技」には球技や持久走なども含まれる。生徒の妊娠を、欠席扱いにしない「特別事情」とはみなしていなかったためだ。
相談を重ねた結果、女子生徒は16年1月から休学。8月に同校通信制への転籍を目指しているという。
こうした経緯を16年6月15日、京都新聞(電子版)などが報じた。
同校の副校長は6月16日、J-CASTニュースの取材に「全日制なので朝から晩までハードな授業がありますし、出産・子育てと学業の両立は難しいと判断して休学を勧めました。『特別事情』の基準についても、時代の変化に合わせて見直さないといけないのかもしれません」と語る。
一方、「持久走を要求したとか、無理やり運動させたとか、そういうことは絶対ありません。授業にしろ、補習にしろ、生徒の体調を配慮して対応します。報道が一人歩きしているような気がします」と困惑した様子で話す。
実際、女子生徒は妊娠発覚後の2学期に体育の授業を欠席している。また、学校側が女子生徒に体育祭への参加を控えるよう説得したこともあるという。副校長は「彼女には説明を尽くしたつもりでしたが、やはり行き違いがあったのかもしれません」と振り返る。
最後に、副校長は「個人的な経験ですが」とことわったうえで、「昔は(妊娠が発覚した生徒は)自主退学を選ぶ場合が多かったように思います」と明かした。
府教委「学校側の説明不足に尽きる」
同級生との卒業を望んだ女子生徒に突き付けられた難しい判断。報道を受けて、ネット上では
「ルールが絶対であり、例外が認められないという日本のよくある在り方だ」
「もう少し柔軟な対応はできなかったのか」
「時代錯誤も甚だしい」
と学校側の対応に批判が巻き起こった。
京都府教育委員会の担当者は取材に対し、「学習指導要領に沿った指導でも、実技分を実技以外のものでおさめることはできます」と説明する。
一般的に、欠席を繰り返した授業は補習を受けなければ履修できず、体育であればそこに実技も含まれる。ただ、担当者によると、総合的な判断のうえ例外も認められるはずだという。
「今回の件はやはり、学校側の説明不足に尽きるのではないでしょうか。実技をどうするか、女子生徒としっかり相談できていれば、学校側が配慮できると明確に伝えていれば、こんなにもつれなかったはずです」