男性と女性が一緒に働く職場が増えているが、男女が協同で仕事をしてもアプローチの仕方が違うらしい。男性同士、女性同士で取り組むと脳活動が活発化し作業がはかどるという研究を米スタンフォード大学のチームがまとめ、2016年6月8日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」(電子版)に発表した。
ただし、研究チームのアラン・ライス博士は「男女どちらかが共同作業が得意であるとか、互いに協力することができないという話ではありません。脳の仕組みから、男女間で協力の方法が異なるということです」と念を押している。
男と女は一緒に仕事をする時は「謎の方法」で協力し合う?
研究チームは、222人の男女を男性同士(39組)、男女ペア(34組)、女性同士(38組)の3つのグループに分け、お互いに協力してコンピューターを使った共同作業をしてもらった。ペアは面識がない人同士で組まれた。作業中は、複数の人の脳活動を同時計測できる「ハイパースキャニング」という方法で、脳のどの部分が働いているかを調べた。そして、次のような作業をしてもらい、成績を分析した。
(1)ペアが並んですわる。それぞれの机の上にコンピューターがあり、画面に次々と円が表示され、その色が変化したらボタンを押す。
(2)2人が同時にボタンを押すと共同作業完了となり、ボタンを押すまでにかかった時間を記録する。作業中はパートナーと話すことができず、互いのコンピューター画面を見ることもできない。つまり相談できないのだ。
(3)作業は計40ターン行なわれるが、各ターンが終わるごとにどちらが早くボタンを押したか、またどのくらい早かったのかなどが通知される。このため、2人は暗黙のうちにボタンの押し方をパートナーと協調し、作業効率のアップを図ることができる。
実験の結果は、次のとおりだった。
(1)「男性同士」と「男女ペア」の成績が同じくらいに良く、「女性同士」が一番良くなかった。
(2)「男性同士」「女性同士」の同性ペアでは、作業中に脳活動がシンクロ(同調)していることが明らかになった。しかも、シンクロ率が高いほど作業の成績が良かった。
(3)ただし、「男性同士」と「女性同士」では、シンクロする脳の領域が異なっていた。また、「男女ペア」では脳活動はシンクロしていなかった。「男女ペア」の場合は、男女間で、何か脳活動のシンクロとは別の未知の方法で協力し合っている可能性があるという。