「母親の声」は、1秒未満でも子どものほとんどが聞き分けるばかりか、脳を活性化させていることが米スタンフォード大学医学部の研究で明らかになった。2016年5月下旬、同大学のウェブサイト上で発表した。
母親の声が子どもの脳にさまざまないい影響を与えることは、赤ちゃんを対象にした多くの研究で明らかになっている。一方、「父親の声」は研究すら見あたらないようだ。
子どものほとんどは1秒未満でも母親の声がわかる
同大の研究を報道したCNNによると、研究チームは、7歳から12歳の子ども24人に、母親の声と知らない女性の声の録音を聞かせて、脳の様子をMRI(磁気共鳴断層撮影装置)で調べた。録音された声は「あ~」とか「む~」とか意味のない単語だったが、子どもたちは1秒に満たない声でも、97%の正確さで母親の声を言い当てた。
また、脳の画像を調べると、母親の声を聞いた瞬間、音を認識する聴覚系はもちろん、感情をつかさどる領域や他人の顔を認識する領域、喜びを感じる領域、また、コミュニケーションに関する領域などが反応を示した。まさに、人間として社会活動をするための領域全般が一瞬のうちに刺激されたわけだ。
チームリーダーのダニエル・エイブラムス博士(精神医学)は「私たちの社会生活や言葉の能力、感情の発達などは母親の声を聞くことで身についていきます。この非常に重要な音源が脳にどんな影響を与えているかわかっていませんでしたが、これほど素早く母親の声が脳の様々な領域に届くとは驚きです」とコメントしている。
早産児に母親の歌声を聞かせると言語脳が大きく
母親の声の偉大さは、赤ちゃんの時から始まっている。2010年にカナダ・モントリオール大学が発表した研究によると、生後24時間以内の新生児の脳波を調べると、母親の声とほかの女性(看護師)の声を聞き分けていることがわかった。しかも、この研究では、母親と似た声の看護師を選び、赤ちゃんが胎内にいる時から定期的に母親と会話を交わし、看護師の声を聞かせていたから、まったく「初めて聞く声」ではない。それでも赤ちゃんは、生まれた瞬間から母親の声を認識しているのである。
2015年に米ハーバード大学が発表した研究によると、母親の声は早産児の脳の発達を促すという。早産児は聴覚や言語能力が不十分になりがちだ。21人の早産児を2つのグループに分け、一方に母親の歌声と心臓の鼓動を聞かせ、一方に通常の病院施設の音を聞かせた。その結果、母親の歌声を聞いて成長した赤ちゃんは、そうでなかった赤ちゃんに比べ、脳の聴覚皮質の発達がよかった。音を聞いたり、言葉を覚えたりする領域だ。
お母さんの優しい声がどれだけ子どもの脳の発達に役に立つか。お父さんもあきらめずにぜひ声をかけてあげると、いいことがきっとあるはずだ。