ツキノワグマ、人を食べ物と認識か 「極めてまれ」な事態が起きた理由とは

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   秋田県鹿角市の山林で射殺されたツキノワグマの胃から人体の一部が見つかったと報じられ、ネット上でショックだとの声が出ている。クマが「血の味」を覚えたということはあるのだろうか。

   仰向けに横たわったクマの死体からは、鋭い歯と爪が見える。地元の猟友会員が2016年6月10日に射殺した体長1.3メートルの成獣のメスだ。

  • ツキノワグマにも鋭い歯と爪が(写真はイメージ)
    ツキノワグマにも鋭い歯と爪が(写真はイメージ)
  • ツキノワグマにも鋭い歯と爪が(写真はイメージ)

体の大きいヒグマは、過去例が広く知られる

   報道によると、同じ日にその近くで、タケノコ狩りに来た青森県の女性(74)がクマに襲われて亡くなっているのが見つかった。当初は、損傷が激しく、性別まで分からないほどだった。

   秋田県警などが射殺したクマを13日に解剖したところ、胃の中から大量のタケノコとともに、人体の一部が出てきた。ただ、女性を襲ったクマなのかは、はっきりしていない。

   鹿角市の山林では、5月21日から男性3人がクマに襲われて亡くなっており、女性で4人目の犠牲者になった。射殺されたクマが3人を襲ったのかも、まだ分かっておらず、県などでは、入山を自粛するよう引き続き呼びかけている。

   クマが人を食べたケースは、北海道のヒグマなら過去にあったらしいと知られている。

   道庁にも記録は残っておらず、国の聞き取りだけというが、大正時代の1915年にあった「三毛別羆(ひぐま)事件」が有名だ。このときは、苫前町の旧・三毛別の村落をオスのヒグマが襲い、7人が死亡するなどしたという。ほかに、数十年前に北海道でヒグマに襲われたケースがいくつかあったとされるが、詳細はよく分かっていないようだ。

   ツキノワグマは、ヒグマより一回り以上体は小さい。それで、本当に人を食べ物と認識してしまうものなのか。

親子連れなどだった可能性も

   クマの生態に詳しい岩手大学農学部の青井俊樹名誉教授は、取材に対し、次のように話す。

「北海道のヒグマは、開拓時代によく人を襲ったと聞いていますが、近年はほとんどありません。それほど肉食タイプではなく、ここ数年は聞いていませんね。ツキノワグマについては、極めてまれで、今回はかなり異例のことだと思います。30年ほど前に、山形県で3人が襲われて亡くなったとき、クマの胃の中から着衣の一部が見つかったと聞いており、それ以来ではないでしょうか」

   新聞記事を見ると、1988年に戸沢村でクリ拾いなどをしていた3人がオスのツキノワグマに襲われ、相次いで死亡している。村や山形県に取材すると、記録はないものの、射殺されたクマの胃から着衣が見つかったり、亡くなった人の足が引きちぎられたりしたという情報はあったそうだ。

   青井名誉教授は、今回のケースについて、クマがたまたま体の一部を食べるなどして食べ物と認識した可能性はあるかもしれないと指摘する。

「4人の方が亡くなった場所は、2キロの範囲内にありますので、同じクマが襲ったことは十分ありうると思います。亡くなった女性には、2頭分の傷があったと聞いており、親子連れなどだった可能性があるでしょう。今後もクマに人が襲われる可能性もゼロではなく、注意する必要がありますね」
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