「給食の調理中に排便した場合、責任者に『報告』すること」――。学校給食を原因とした集団食中毒の発生を受け、福井県若狭町が改定した給食センターの「衛生管理マニュアル」が、「再改定」を経てなお物議を醸している。
衛生管理を徹底するため、調理員に「排便報告」を求めるマニュアルの内容に、ネット上では「セクハラ」「パワハラ」ではないのか、との指摘が殺到している。
「調理時間中に排便しなくて済むように心掛けること」
今回の集団食中毒は、センターの調理した給食に付着したノロウイルスが原因で発生した。2016年5月19日か20日の給食を食べた児童や教職員ら100人以上が、食中毒と病院で診察された。センターは5月23日から業務停止となっており、再開に向けてマニュアル改定やトイレの改修工事など衛生環境の改善を進めていた。
食中毒の発生後に改定された新しいマニュアルは当初、調理員は「午前中はセンター内で便をしないこと」を規定。調理時間にあたる朝8時から11時30分までは、「原則」として排便を禁止するとしていた。
こうしたマニュアルの内容が、毎日新聞電子版が6月9日に配信した記事で伝えられると、ネット上には「これはやりすぎ」「明らかに人権侵害」と厳しい批判が相次いだ。また、若狭町が8日から10日にかけて実施した住民説明会でも、「生理現象の制限」に疑問の声が上がった。
同様の指摘がセンターにも直接寄せられたこともあり、若狭町は13日にマニュアルの「再改定」を決定。文面を「なるべく出勤前に排便を済ませ、調理時間中に排便しなくて済むように心がけること」に修正し、表現をやわらげた。
だが、再改定後のマニュアルでも、調理員がやむを得ずに排便した場合の「対応」に変更はなかった。
センター内のトイレで調理時間中に排便した場合、調理員はセンター長(現在は男性)か衛生管理責任者(同、女性)のどちらかに報告しなければならない。その上で、当日中は調理業務から外され、以降は事務作業や食器洗浄の業務を行うという。