佐藤製薬の看板商品「バイエルアスピリン」のPRキャンペーンに対し、ネットユーザーの一部から「女性をバカにしている」といった批判が寄せられている。原因は、バイエルアスピリンの解熱・鎮痛効果を「オトコの夢」に託したキャンペーン特設サイト。女性社員との深夜残業、女性社員に体調を気遣われる、などどこかで見たようなシチュエーションがイラストで紹介されている。
同社はサイトを予告なく閉鎖した。それが逆効果だったのか、批判の書きこみはその後も続いている。なぜサイトを閉鎖したのか、佐藤製薬に聞いた。
シチュエーションボイスに超人気声優を起用
頭痛やのどの痛み、筋肉痛、生理痛など幅広い症状への効果をうたうバイエルアスピリン。これを日本で販売するのが佐藤製薬だ。
同社は商品PRのため、16年5月30日にキャンペーンサイト「オトコの夢実現研究所」をオープンした。サイト内では、体感できる「ストレス発散コンテンツ」として「ビジネスマン500人のアンケート調査から完成した『男性ビジネスマンが実現したい憧れのシチュエーション』5選の癒しボイス」を聞ける。
5つのシチュエーションイラストにボイスを付けたのは、『鋼の錬金術師』や『とらドラ!』『ゼロの使い魔』など数多くのアニメ作品に出演した人気声優・釘宮理恵さん。
さらに、各シチュエーションはボイスの再生回数でランク付けされている。サイトが閉鎖された6月11日以降、ランキングの推移やボイスの内容は確認できないが、キャッシュページを見る限り、少なくとも4日、7日の2日間はランキングが上下していない。
1位は意中の女性社員とオフィスに残る「2人きりの深夜残業」、2位は同じ大学出身の女性と駅ビルのエレベーター内で出会う「密室のエレベーター」、3位は意中の女性社員から風邪気味の体調を心配される「あなたが心配...」、4位は意中の女性社員を傘に入れて駅まで帰る「突然の雨...」、5位は学生時代に心を寄せていた女性と自宅近くの駅で出くわす「近所でばったり...」だ。
一方、ネット上ではこうした「男性目線」のPR手法をめぐり、
「キモくないところが1ミリもない」
「会社をイメクラだとでも思ってるんだろうか」
「女をバカにし性的対象として描いている」
と批判が多く寄せられた。バイエルアスピリンの女性利用者は無視して良いのか、といった趣旨の指摘も少なくなかった。
女性社員のプレビューでも「ネガティブな意見は出なかった」
16年6月14日、J-CASTニュースの取材に応じた佐藤製薬の担当者はサイト閉鎖の理由について、こう明かす。
「開設後あまりアクセスも伸びず、広告効果が期待できないと判断したからです」
キャンペーンを始めたきっかけは、鎮痛剤の差別化。同社はバイエルアスピリンの他にもう1つ、「リングルアイビー」という女性利用者の多い鎮痛剤を取り扱っている。そのため、「バイエルアスピリンは男性ユーザーをメインターゲットにしたい、というブランド戦略上の必要性」があった。
そんな中、広告代理店からの提案に乗る形でキャンペーンは始まった。結果的にサイト閉鎖を決めたものの、それはあくまで「広告効果が期待できない」と踏んだからだ。
担当者はネット上の批判について「貴重な意見と考えるが、意外な一面もあった」と驚いた様子で話す。サイトの内容に関して同社に寄せられた反応は、閉鎖後の電話1本だけ。公開前に実施した女性社員のプレビューでも「ネガティブな意見は出なかった」という。ネット上での批判の声はまさに「寝耳に水」だったのかもしれない。
最後に、バイエルアスピリンに関する今後のプロモーション方法を聞くと、
「広告ビジュアルも男性モデルを使っていますし、今後も男性ユーザーをターゲットにすること変わりありません」
と答えた。ちなみに、再生回数が増えると表示される「スペシャルシチュエーション」は、サイト閉鎖で「お蔵入り」になったという。