シャラポワは「妖精が陽性に化けた」 薬物違反めぐる世界的余波

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   女子テニス界でもっとも人気のあるマリア・シャラポワが薬物違反で国際テニス連盟から「出場停止2年間」の処分を受け、リオ五輪出場は絶望的となった。この余波は世界に飛び火している。

   処分が出たのは2016年6月8日(連盟本部所在地、英国現地時間)のことである。

「シャラポワは今年の1月26日から2年間、試合に出場できない停止処分とする」

   国際テニス連盟の処分は、シャラポワの実績、人気など関係なかった。ばっさりとやった。

  • 「コートの妖精」が輝きを取り戻せる日は来るのだろうか(写真:AP/アフロ)
    「コートの妖精」が輝きを取り戻せる日は来るのだろうか(写真:AP/アフロ)
  • 「コートの妖精」が輝きを取り戻せる日は来るのだろうか(写真:AP/アフロ)

テレビ視聴率との関係

   発端は、1月の全豪オープンの大会中に採取された検体が禁止薬物の陽性反応を示したからだった。そのときは暫定的な資格停止処分としていたが、その後の調査の結果、この処分となったものである。停止処分の発効日はその検査日となっている。

   停止処分が出たことで、8月のリオデジャネイロ五輪出場は、ほぼ絶望的となった。五輪出場については5月に、シャラポワの国籍であるロシア・テニス連盟が「女子代表」に選んだことを発表していた。

   このニュースは世界に流れ、大きな反響を呼んだ。

「強い選手なのに、なぜ?」

   これが一般的な反応だったが、テニス界はもっと深刻にとらえた。

「女子人気に影響するのではないか」

   シャラポワのプレーはテレビ視聴率を稼げる。ということはテニス界の収入に響く。

「処分は受け入れられない」と争う姿勢

   シャラポワは引き下がらない。

「処分は受け入れられない」

   自らのフェイスブックで態度を鮮明にした。その上で検査から処分までについて闘うことを宣言した。スポーツ仲裁裁判所(CAS)への異議申し立てを行うことを表明している。

「早くテニスコートに戻りたい。そのために闘う」

   処分はそれほど重いものではない。指摘された禁止薬物については、意図的な使用の場合は最大4年間の出場停止だが、今回はそれにあたらないとして半分の長さとなった。

   シャラポワは現在、29歳である。処分が終わったときは31歳(1月末の処分明け直後の段階では30歳)。この年齢と、停止期間中に獲得ポイントを失うことでランキングが下がり、そこから再び上位に上がることは厳しい。

「こんな形で現役を引退したくない。なんとか復帰するチャンスを望んでいる」

   こう悲壮な決意を語るシャラポワは、デビューして以来、その美貌から「コートの妖精」と呼ばれた。容姿とは裏腹な激しいプレーとも相まって人気は高まり、ナンバーワン選手となった。

   いまはそこから滑り落ち、「妖精が陽性に化けた」とのブラックジョークのなかにいる。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)

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