外国語を話すバイリンガルの子どもは、脳が活性化し学習能力が高いことは多くの研究で知られているが、標準語に加えて方言を話す子どももバイリンガル並みに「脳力」が高いことが明らかになった。
英ケンブリッジ大学のチームが研究をまとめ、認知心理学誌「Cognition」(電子版)の2016年4月27日号に発表した。
認知能力が高かったのは...
研究チームは、東地中海に浮かぶ島国キプロスの子どもたちを対象に、方言の使い分けが子どもの認知能力に与える影響を調べた。キプロスは、古代からペルシャやギリシャ、ローマ、イギリスなど多くの国々から支配を受けた歴史を持ち、現在もギリシャ系やトルコ系など様々な民族が住んでいる。だから言語は多様で、バイリンガルの子どもが少なくない。
公用語はギリシャ語だが、同じギリシャ語の中でも「アテネ語」「クレタ語」「キプロス語」など様々な方言がある。日本の「関西弁」「熊本弁」「津軽弁」のようなものだ。
研究チームは、子どもたちを家庭の経済状況(収入・職業・学歴)や本人の言語能力・全般的知能などを考慮しつつ、次の3つに分けて、詳細な認知能力や学習能力のテストを行なった。
(1)「英語とギリシャ語」「ギリシャ語とトルコ語」など複数の言語(外国語)を話すバイリンガルの子ども(47人)。
(2)同じギリシャ語系の中で、「標準語とキプロス語」「キプロス語とクレタ語」など2つの方言を話す子ども(64人)。
(3)「キプロス語だけ」「アテネ語だけ」など、1つの言語を1つの方言だけでしか話さない子ども(25人)。
その結果、(1)と(2)の子どもたちは、(3)の子どもたちより認知能力は高かったが、(1)と(2)の間ではほとんど差がなかった。2つの方言を話す子どもたちは、バイリンガルの子どもたちと「脳力」の面で、なんらひけをとらなかったのである。日本でいえば、標準語と鹿児島弁を話す子どもは、日本語と英語を話す子どもと変わらないことになる。