日本ヤフー株買い取り?新たなM&A?それとも...
というわけで、ソフトバンクの真意を巡り、憶測が飛び交う状況になっている。
まず、金融市場で根強く指摘されるのが、米ヤフーが保有する日本ヤフー株買い取り。日本のヤフーは堅調だが、米ヤフーは経営不振にある。このため保有する約35%の日本ヤフー株売却を検討しており、その時価がちょうど1兆円程度とされる。日本ヤフーに約43%出資し、事実上の親会社であるソフトバンクにとって、35%が他の投資家に渡って重要事項に拒否権を持たれることは避けたいところ。米ヤフーは入札作業を進めていて、米通信大手などの応札が報じられている。
また、ソフトバンクが買収したものの経営が悪化している米通信大手スプリントの立て直しの資金に充てるとの見方もある。2013年、当時の為替レートで約1.8兆円の巨費を投じたが、赤字を垂れ流し、ようやく営業黒字にこぎつけたものの、コストカットが主因で、業績回復の道のりは遠い。いまやグループのお荷物状態で、今回の資金を投じて再建後に売却するとの観測もある。ただ、米国での成功を夢見る孫社長が簡単に手を引くことはないとの声もあり、憶測の域を出ない。
このほか、新たなM&Aに乗り出す可能性もある。80億円の報酬で話題になった孫社長後継候補のニケシュ・アローラ副社長が、グローバルのM&Aを統括する立場として成果を求められていることから、新しい成長戦略をどう描くか、期待を込めた声だ。
他方、今のソフトバンクに余力は乏しいと見る向きもある。過去の拡大戦略のために発行した社債が大量償還期を迎え、今期は年間9000億円を超える返済を迫られる。スプリントに代表される過去の投資の「負の遺産」もあり、「新たなM&Aどころではないのでは」(業界関係者)というわけだ。とすれば、今回の巨額資金確保も、優良資産の切り売りに過ぎないという評価になる。
これまでも、様々な困難に直面し、厳しい指摘を受けながら、ソフトバンクをここまで成長させてきた孫社長の次の一手に注目が集まる。