親権者指定に「寛容性」の基準導入
千葉家裁松戸支部で16年3月、このフレンドリー・ペアレントルールを採用した判決が出た。同居親を決める上で、親権を認められた側が別居親の存在を肯定的に子どもへ伝えられるか、面会交流に協力できるかといった「寛容性」を判断基準にした判決で、その父親側代理人が上野弁護士だ。
あらましは、こうだ。不仲だった夫婦のうち、母親が娘を連れ、父親に無断で実家へ帰省した。それから約5年にわたり、父親は娘に会えなくなった。父親は親権を求めて提訴。父子面会の条件として「月1回程度」を提示する母親側に対して、父親側は自分が親権者になった場合、母子面会を「年間100日程度」認めるとした。
「継続性の要件」を採った場合には、長く同居している母親側が有利に考えられるが、松戸判決では「年間100日」の面会計画がポイントとなり、父親を親権者とし、娘の引き渡しが命じられた。すでに控訴されているが、親子ネットによると、フレンドリー・ペアレントルールを明確に採用した「国内初」の判決だそうだ。
親権をめぐる訴訟では、もう一方が親権者として適格でないと示すため、相手を誹謗中傷することが多々あるようだ。しかし、離婚後も一緒に子供を育てる「共同養育」の考え方では、親権を奪いあう必要は少なくなる。
「どちらかが善であって、どちらが100%の悪であるなんていう事はない。少なくとも子供との関係では、絶対にそんなことありえない。だからこそ、両親いずれかが100取るのではなく、両親のいずれも子供ときちんと関われる形を作る必要がある」(上野弁護士)
草の根活動だけでなく、政治家も動きつつある。超党派の国会議員による「親子断絶防止議員連盟」(会長:保岡興治元法相)は2016年5月、親子関係の維持に向けた法案骨子をまとめた。松戸判決の控訴審は、7月にはじまる予定。東京高裁がどう判断するか、注目が集まっている。