日経は「潜在成長率を引き上げる構造改革」の必要性も強調
これに対して、基本的に安倍政権を支持する「読売」も、さすがに「リーマン・ショックを引き合いに出すことには違和感がある」(5月31日付)、同じく「産経」は「首相の認識は各国首脳の共通理解とはならなかった。国内にも異論は多い」(同)と指摘した。
ところが、アベノミクスと首相の延期決断への評価はというと、各紙の立場は分かれる。「朝日」「毎日」「日経」は、「首相がいまなすべきは......アベノミクスの限界と弊害を直視し、軌道修正すること。そして、一体改革という公約を守り、国民の将来不安を減らしていくことだ」(「朝日」5月31日付)、「社会保障の財源が失われてしまうことで、社会や経済の将来の不安は拡大してしまう。......借金を将来の世代につけ回ししないための枠組みを崩壊させてはならない」(「毎日」6月2日付)、「再び延期するのは極めて残念だ。......見逃せないのは、増税の再延期で巨額の財政赤字を放置し、子や孫の世代にツケを回すことだ」(「日経」1日付)など、アベノミクスを失敗と断じないまでも、限界が明らかになってきているとの基本認識と、税と社会保障の一体改革の枠組みが崩れてしまうことへの危惧で共通する。「日経」は特に、「潜在成長率を引き上げる構造改革」の必要性も強調している。
一方の「読売」「産経」は、「消費税を財源に社会保障を支える『税と社会保障の一体改革』は堅持しなければならない」(「読売」2日付)、「財政再建に後ろ向きな姿勢をみせれば財政への信任は保てまい」(「産経」2日付)と、財政再建の重要性は共通する。ただし、結論として、増税先送り自体については「アベノミクスは雇用改善などに効果を上げたが、消費のもたつきなどの課題も残る。脱デフレを確実に果たすため、消費増税の先送りはやむを得ない選択だ」(「読売」同)、「デフレ脱却を実現するうえで、景気回復が遅れる中での増税実施は困難だと考えた......その判断自体は現実的かつ妥当なものといえよう」(「産経」同)と、首相の判断への支持を明確にしている。 なお、「産経」がやや辛口に「増税できる経済環境を作るという約束を果たせなかったことを首相が認め、その原因を明確に説明する」(5月31日付)ことを求めたのに対し、「読売」は首相の政策運営の正否には触れず、同じ「親安倍」でもトーンに違いが出ている。