山口組系暴力団組長の被告の男(58)が娘の結婚式に出ることを認め、大阪地裁が男の勾留を一時的に執行停止したと報じられ、ネット上で様々な意見が出ている。
「娘も結婚式への出席を望んでいる」。朝日新聞などの2016年6月10日付記事によると、男は、こう理由を述べて、執行停止を申請したという。
検察も警察の警備が整ったとして準抗告せず
男は、中国から200万円分の偽造印紙を密輸したとして4月に大阪府警に逮捕された。その後、関税法違反などの罪で起訴され、初公判を控えていた。
男の執行停止申請については、大阪地検は、反対意見を出した。男は、前科がある暴力団組長で、起訴事実を否認していて逃走の恐れがあるというのが理由だった。
しかし、大阪地裁は5月10日、警察官と弁護人が同行することを条件に、結婚式に出ることを5時間半認める決定を出した。これに対し、地検は、執行停止は限られた時間であり、警察の警備も整ったとして、決定への不服申し立てに当たる準抗告は行わなかったという。男は、保釈も申請したが、それは認められなかった。
式は、関西地方のホテルでこの月の14日に行われ、男は、厳重な警備が敷かれる中で、娘と腕を組んでバージンロードを歩いた。
勾留の執行停止は、被告の病気による入院や、家族が危篤状態になったとき、家族の葬式など、緊急なケースでは認められることも多い。家族の結婚式についても、30年ほど前に大阪地裁が認めたことがある。しかし、このときは検察が準抗告を行い、高裁が執行停止は適当でないとして地裁の決定を取り消していた。
ネット上でも、勾留中の結婚式出席についての法律相談で弁護士が裁判所は認めないと答えているケースが多い。それだけに、今回実際に執行停止されたことは異例の事態だ。
大澤孝征弁護士「証拠隠滅の恐れがあり、準抗告すべき」
新聞各紙の記事を見ると、法律の専門家からは「緊急時ではないのに、違和感を覚える」と執行停止への疑問が出ていた。暴力団同士が抗争中のときに、市民の安全を考えるべきだとの声もあった。一方で、「短時間なら問題はなく、地裁の温情決定は理解できる」と評価する専門家もいた。
ネット上では、疑問の声が多く、「自業自得。裁判所は甘い」「逃げ出してたらどうすんだ」「一般人でも同じことが認められるのか」などと書き込まれている。もっとも、「娘の結婚式ぐらい出させてやってもいいだろ」「これが異例なのがおかしい」「服役ならともかく勾留だからな」と理解を示す向きもある。
元東京地検検事の大澤孝征弁護士は、J-CASTニュースの取材に対し、結婚式出席での執行停止については、ある程度評価できるとした。
「以前は、おめでたい席に出てくるのはいかがなものかという雰囲気が、結婚式の両家の間でもありました。勾留中の人も、みっともないと式に出るのをはばかっているようでした。それに比べて、今では人の気持ちが変わり、裁判所も血も涙もあるところを見せるようになったのでは。検察も出席を認めることで、捜査がしやすくなる面もあるかもしれませんね」
ただ、今回は、被告の男が暴力団組長であり、否認もしていることから、検察は準抗告すべきだったと指摘する。
「結婚式で出席者と合図するなどして口裏を合わせたりして、証拠隠滅の恐れがあると思います。安全面を考えても、何かあったら問題になるでしょうね。私が検事なら、地裁の決定に準抗告しますよ」