「健康美」とよくいうが、こと女性の場合は「健康的に見える体型」と「魅力的に見える体型」が異なることがわかった。魅力的な体型は、健康を度外視するほどやせた体を理想とし、「健康=美」という図式が成り立たないのだ。
一方、男性では「健康的な体型」と「魅力的な体型」は一致した。ユニークな方法で研究をまとめたのはオーストラリア・マッコーリー大学の心理学のチーム。米科学誌「プロスワン」(電子版)の2016年6月3日号に発表した。
オトコの体脂肪率は「健康美」と「筋肉美」が一致
体の健康と美しさに対する意識の男女差を探るために、研究チームは「体脂肪率」を分析の方法に用いた。具体的な数字で比較できるからだ。18~30歳までの若い白人男女63人(平均年齢21歳、男性33人、女性30人)を対象に、コンピューター画面に自分の写真を映し出し、コンピューター・グラフィックス(CG)を使って理想の体型に変えていく実験を行なった。理想の体型とは、「自分が最も健康的に見える体」と「自分が最も魅力的に見える体」の2つである。具体的には次の方法で実験を行なった。
(1)参加者全員の身長、体重、体脂肪率を測定する。
(2)参加者全員に、体の線が出るピッタリしたランニングシャツとショートパンツを着てもらい、正面を向いた全身の写真を撮る。
(3)コンピューター画面に自分の全身の写真を映し、CGを使って自由に筋肉や脂肪を増減して体型を変え、自分が最も「健康的な体」と「魅力的な体」と感じる姿に仕上げていく。
(4)作業中に、画面の横には筋肉・脂肪量に応じた体脂肪率が表示される。
この結果、男性では「最も健康的に見える」体脂肪率の平均は約16%で、「最も魅力的に見える」体脂肪率の約15%とほぼ同じだった。ところが女性では、「最も健康的に見える」体脂肪率が約19%なのに、「最も魅力的に見える」体脂肪率は約16%とかなり低かった。
従来の研究では、健康な白人の体脂肪率は、男性が8~21%、女性が21~33%とされている。今回の結果では、男性は両方ともその範囲に入っているが、女性は両方とも入っていなかった。特に「最も魅力的に見える」体脂肪率の16%は、体を鍛えているアスリートならともかく、一般の女性では「やせすぎ」に入る。体脂肪率が18%を下回ると、排卵がとまる女性の割合は半数以上にのぼるといわれ、15%を切ると妊娠そのものが難しくなるという。
ちなみに、「16%」や「19%」という体脂肪率とは、どんなイメージの女性なのか。体脂肪率に関する健康サイトをのぞくと、マラソン選手や腹筋が浮き出たフィットネスモデルの体脂肪率が15%前後だそうだ。15~17%では、全身の血管や筋肉がクッキリ浮かび上がる。20~22%では、適度に腹筋が割れながらも女性らしいふくよかさがあり、プロのダンサーたちの体脂肪率が20%代前半だといわれる。