親のマナーが悪いとして、北海道砂川市教委が運動会での飲酒禁止を求めたことが報じられ、ネット上で話題になっている。しかし、首都圏の小学校では、事情がかなり違うようだ。
「禁止が当たり前だとおもっていた」「運動会を見に来た親が飲酒するなんて考えられない」「今まで禁止じゃなかったことに驚き」――飲酒禁止について、北海道新聞が2016年6月9日に報じると、ネット上では、こんな声が広がった。
禁止のきっかけは、飲酒運転による一家の死傷事故
J-CASTニュースが6月9日、砂川市教委に確認すると、禁止のきっかけは、市内で15年6月に飲酒運転で一家5人が死傷した痛ましい事故だという。16年の運動会シーズン前に、飲酒運転をしないよう保護者に文書で求めたが、5月末にフジテレビ系ニュースで親たちが運動会で酒盛りをして車を運転したことが報じられた。市教委では、道警に事実確認をしたうえで、市内の全小中学校の保護者あてに6月8日、運動会などの学校行事では飲酒を全面禁止するとした文書を配った。
北海道では、運動会が地域の祭りのように位置づけられている実態もあり、道新記事によると、飲酒については各校の判断に任せられていることが多い。ところが、「親のマナーが悪い」と飲酒などに苦情が寄せられることも増え、釧路市教委では、5年前から運動会での飲酒を自粛するよう求める文書を保護者に配るようになっている。
全国的にも、運動会での飲酒というのは、問題になってきているのだろうか。
試しに、首都圏の小学校について取材すると、甥が東京都内の区立小学校に通っているという50代の会社員男性は、「運動会で飲酒が見つかったら、即座につまみ出されますよ」とその実情を明かした。
「飲酒は、子供が主役の場にふさわしくない」
運動会では、PTAの監視係が見回っており、「飲酒は、子供が主役の場にふさわしくない」と厳しい目を光らせているという。不審者がいないかなどもチェックしており、勝手にビデオを回すこともできないそうだ。
東京・多摩地区の市立小学校の副校長は、取材に対し、運動会での飲酒について、「ないですね」と即答した。
「何年か前はあったようですが、今年の運動会は、見回っても飲酒はありませんでした。校内では、禁酒、禁煙になっており、もし見つかれば『出て行って下さい』となります」
千葉・湾岸地区に住む60代の会社員男性は、10年ほど前の小学校運動会では、酒盛りは普通だったと話す。日本酒の1升瓶を置いて親戚とシートで陣取り、徒競走で酔った父親が一緒に走り出す光景も見られたという。
そこで、この市立小学校に取材すると、校長は、「10年前のことはうわさでは聞きましたが、今は、校内は禁酒、禁煙でうるさくなっています。むしろ親の方が厳しく、学校の外でタバコを吸っていても苦情が来るほどです。こっそり飲んでいるケースはあるかもしれませんが、運動会で飲酒を許している学校は市内にはないですね」と言う。
砂川市教委の飲酒禁止に驚く声がネット上で多かったのも、都市部の学校では禁止が当然とみなされているからかもしれない。
ただ、J-CASTニュースが5月24日付記事「運動会で暴れ出す『モンスター保護者』 校庭でバーベキュー、徒競走に『ビデオ判定』」で報じたように、運動会後にビールの空き缶などが校庭に放置されるのは珍しくないというケースもあり、首都圏でも地域によっては事情が違うようだ。