筆者がかつて「のけぞった」、金融機関関係者からの要求とは
現在、特別参加者は22社(5月時点)である。もっとも、国債に入札する社は246社。三菱UFJ銀行も特別参加者から抜けても入札者になっているわけで。これで国債消化がどうなるものでない。そもそも、国の財政状況は、世間で言われる1000兆円の借金ではなく、日銀も含めて政府の連結バランスシートをみれば、実質的に100兆円を超えた程度しかない(2016年1月14日付け本コラム)。これでは、財政破綻論者のいう国債暴落は起こらず、逆に国債暴騰つまりマイナス金利になるのも、もっともだ。
特別参加者は、一定の応札・落札義務があるが、そのかわりに財務省からの情報を直接とれるというメリットがある。
筆者は20年以上前に、(同趣旨制度での)その担当者をしていたことがある。当時は、大蔵省の主催するパーティに特別参加者の金融機関の人を招待していた。金融機関が大蔵省を接待するのは当たり前の時代に、逆に大蔵省が金融機関を接待したということで話題になったものだ。
ところで、金融機関の人は商売に直結した情報を露骨に求める。筆者も、入札の足切り価格を発表前に教えてくれと言われて、のけぞったことがある。もちろん決して教えなかった。今ではそんな非常識なことはあり得ない。筆者の現役時代に行われていたパーティも、国債市場特別参加者会合という「普通の会議」になったようだ。
もっとも、財務省のホームページで、特別参加者のメリットとして、「国債市場特別参加者会合に参加し、財務省と意見交換等を行うことができます」と書かれていることに苦笑いしてしまった。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、「マイナス金利の真相」(KADOKAWA) など。