ミュージシャンで俳優の吉川晃司さん(50)が「反安倍政権」の姿勢を鮮明にしている。被爆二世として広島県に生まれた吉川さんは、東日本大震災以降、「反原発」そして「反政権」のスタンスを明らかにしてきた。2016年5月17日に発売された「週刊プレイボーイ」(5月30日号)のインタビューでも「俺は現政権がでえっ嫌い」とぶちまけるなど、時期的に参院選も差し迫るなかでも、その姿勢は止まらない。
ドラマやCMへの出演など芸能活動を精力的に行っている吉川さんの発言にはネットで賛否の声が上がる一方、一部からは「余計な事は言わない方がいい」と心配する声も聞こえてくる。
原発事故では「マスコミや既得権益層にだまされた」
「プレイボーイ」インタビューで日本社会の展望を問われた吉川さんは、こう答えている。
「閉塞感とか未来に陰りが見えるというか。このままいくと大して素敵な未来は待ってない感は満載だよね」
そして、女性問題が原因で自民党からの参院選出馬を見送った作家・乙武洋匡さんに触れ、「俺は現政権がでえっ嫌いなもんだから、疑問と残念感は残るんだけど。今、(参院選で)自民党から出るのはやめましょうよ」と自民党への強い嫌悪感を表明した。
こうした発言をするようになったきっかけは、「東北の大震災」だった。「あの時の支援復旧の仕方とか、原発うんぬんの情報でも、一部のマスコミや既得権益層にだまされてたなっていうのを痛感させられたわけ。俺は愚かだったなと」と振り返る。
吉川さんは以前から「反原発」「反政権」的な発言を繰り返している。
2012年1月発売の『別冊カドカワの本 愚 日本一心 吉川晃司』では、東日本大震災以降、脱原発を訴えてきた小出裕章・元京都大学原子炉実験所助教とも対談。11年の参院本会議で可決された、原発輸出の前提となる数か国との原子力協定について、「日本は、現在の人類が修復のすべを持たないモンスターを海外に売ろうとさえしている」と痛烈な批判を加えた。
「なんでも良いから本業頑張ってくれ」の声も
自身がパーソナリティを務めるラジオ番組「D.N.A~ロックの殿堂~ 吉川晃司 SAMURAI ROCK」(JFN系列)でも、原発政策やアベノミクスなどを題材にたびたび安倍政権を批判。
また、14年9月9日発売の「週刊朝日」(9月19日号)では、13年4月発売のニューアルバム『SAMURAI ROCK』に収録されている『絶世の美女』を「反原発をテーマにした楽曲」だと明かしている。確かに、「魔女も驚く melting down」「Oh,No NU World」といった原発を連想させるリリックが並んでいた。
吉川さんが音楽まで使って、自身の政治スタンスを主張し続ける理由は何なのか。13年8月発売の『ビッグイシュー』(220号)によると、吉川さんは被爆二世として広島県に生まれ、周囲の大人から「原爆の話を聞かされて育ってきた」という。そうした生い立ちが影響しているのかもしれない。
吉川さんといえば、大河ドラマ『八重の桜』(NHK)やドラマ『下町ロケット』(TBS系)といった人気番組に出演し、現在は「日清焼きそばU.F.O」やキリン「生茶」のCMキャラクターを務める売れっ子芸能人でもある。そうしたなかで、メディアを通じて政治的な発言を繰り返すのは、日本の芸能界では特異な存在といえる。
このため、吉川さんの言動に対してツイッターなどでは、
「自主規制ばかりしているマスコミやタレントは彼を見習うべき」
「ロックンロールとはこういうもの」
「こんな気骨のある男とは思わなかった」
と賛同する声が上がる一方、
「いい歳して薄っぺらい発言しなきゃいいのに」
「単なる感情論で物事を判断すべきではない」
「電気を一切使用しないライブをやってからにして」
と、批判する声が入り混じっている。
また、6月22日公示、7月10日投開票の参院選が迫っていることも関係しているのかここにきて、
「なんでも良いから本業頑張ってくれよ」
「余計な事は言わない方がいいとおもう...」
などと吉川さんを気遣う声も出始めている。