消費増税の再延期、国債暴落の引き金になるのか
政府はこれまで、2017年4月の消費増税を前提に、2018年度にプライマリー・バランス(基礎的財政収支)の赤字幅を名目GDP(国内総生産)比で1%程度に縮小したうえで、2020年度にはプライマリー・バランスの黒字化を図るという財政健全化の道筋を示してきた。今回の消費増税の再延期で、その展望が不透明になったのだから、格下げされても仕方ないところ。それにもかかわらず、「格下げ」には至っていないのは、なぜか――。
第一生命経済研究所経済調査部、主任エコノミストの藤代宏一氏は、「最近は世界経済の見方が変わってきました」と指摘する。「2013年ごろまでは欧州の債務危機があり、おのずと政府債務に目が行きました。そのためネガティブに捉えられがちでしたが、債務危機を経て、最近は行き過ぎた財政規律は経済成長の足を引っ張る可能性があるとの意見も増えてきました」と説明。今回の消費増税の再延期が、国債暴落の引き金になることがないことは、「すでに市場(長期金利が安定して推移していること)が証明しています」と話す。
とはいえ、どこかのタイミングで日本国債が格下げされる懸念は拭えない。格下げによって長期金利が上昇(国債価格は下落)することで、海外投資家やヘッジファンドなどが投機的に日本国債に「売り」を仕掛けることも想定される。
前出の藤代氏は、「政府債務の残高が世界一多いことは確かですが、それがすぐさま国債価格の暴落につながるとは限りません。日本は他の債務が多い国と比べて輸出も多く、『稼ぐ力』があります。他にも債務が多い国がある中で、いきなり『日本売り』が起こることは考えづらい。国債暴落が起こるときはすべてがダメになるときで、現状その心配はありません」と話す。