「客観性を担保できるのか」「知事を守るための報告書にしか思えない」――。東京都の舛添要一知事による政治資金「公私混同」疑惑で、「第三者」の弁護士2人がまとめた調査報告書への批判が相次いでいる。
さらには、全63ページに及ぶ報告書を記者が「第三者の目」で詳しく読んでいくと、弁護士に「不適切とは言えない」と判断された支出の中にも、「本当に政治活動として不適切ではないのか」と疑問が残る項目がいくつも見つかった。購入した書籍の中には、『老けない体は股関節で決まる』といった健康本や、筆者の直筆サインが入った「プレミア本」もあった。
美術の知識を得るために「サイン本」は必要?
調査に当たった佐々木善三弁護士と森本哲也弁護士の調査報告書によれば、舛添氏の宿泊費や飲食費、美術品の購入代金など計129件、総額約440万円が「不適切な支出」と指摘された。いずれも「政治資金の使途には法律上の制限はない」との理由から「違法ではない」とされている。
一方、弁護士の調査で問題視されていない項目の中にも、「趣味」と「政治活動」の線引きが曖昧な支出がいくつも見つかる。例えば、舛添氏が政治資金で購入した書籍の中には、『60歳からはじめる寝たきりにならない超簡単筋力づくり』『「老けない体」は股関節で決まる!』といった健康本も複数冊あった。
また、美術書や美術カタログの購入については、「一面においては舛添氏の趣味である」としつつも、美術の知識を「政治活動に活かしているため」、全点において「不適切ではない」と判断された。
だが、購入した美術書の中には、筆者の直筆サインが入った「プレミア本」もあった。このとき、舛添氏は1973年に発売された写真集の「初版本」などを同時に購入。価格は、3点で計5万2500円だった。
ちなみに、政治に関連する書籍であることは確かだが、都知事就任の前年にあたる2013年に舛添氏は『独裁者のためのハンドブック』なる本を購入していた。版元の亜紀書房の公式サイトなどによれば、ヒトラーやスターリンなど世界の独裁者をケーススタディに、「カネとヒトを支配する権力構造を解き明かした」書籍だという。
佐々木弁護士「一般常識に照らし合わせて・・・」
佐々木弁護士は今回の調査について、2016年6月6日の記者会見では「最終的には一般的な常識に照らし合わせて判断した。道義的な責任についての判断は一般の方々と変わらない」と説明していた。
だが、調査結果の内容に納得できなかった「一般人」は多かったようで、ツイッターやネット掲示板には、
「これが、舛添さんの『一般常識』ってことなのかしら」
「舛添が自腹で買ってるものの方が気になる」
「違法性云々より、それぐらい自分の金で買えよって思うわ」
といった批判や揶揄の声が殺到した。舛添氏の公式ツイッターアカウントにも批判が相次いでおり、「炎上状態」の様相を見せている。
もちろん一般人だけではなく、都議会議員からも批判の声が上がっている。
北区選出の音喜多駿氏(かがやけTokyo)は6日深夜のブログで、報告書について「到底、納得できる内容ではありません」と一言。「都民の目線で厳しいご意見をいただければ」と述べ、報告書の全文をウェブに公開した。大田区選出のやながせ裕文氏(無所属)も、7日のブログで「結論からいえば『調査不足』であり『知事を守るための報告書』としかいいようがない」と激しく批判した。
6月7日午後に行われた都議会の代表質問では、与党からも厳しい「追及」が飛んだ。自民党の神林茂総務会長は、調査の内容について「信頼性を保てるとお考えなのか」などと質問。だが、舛添氏は「厳格な調査を行ったと考えている」などと答えるだけで、具体的な説明はなかった。