2016年6月5日に投開票された沖縄県議選では、翁長雄志知事を支える勢力(県政与党)が過半数を維持した上で勢力を伸ばした。県民が翁長県政に一定の信任を与えた形だ。
それでも、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題をめぐっては「政府の考え方には変わりない」(菅義偉官房長官)といい、県と政府の対立が先鋭化するのは確実。だが、現地紙に比べて在京各紙の扱いは総じて抑制的な扱いだ。特に産経新聞は「菅長官 在職期間2位に」の見出しより小さい扱いだった。
翁長知事「与党」が「26議席以上」を獲得
沖縄県議会の勢力は、告示前は全48議席(うち欠員1)のうち、共産や社民など県政与党は半数の24人が占めていた。今回の県議選で当選した48人のうち、27人が事前に報道各社が行ったアンケートに対して「与党」と回答。翁長氏の勢力は3議席増えた。自民をはじめとする野党も告示前の14議席から15議席に1議席増やしたが、公明などの中立勢力が9から6に減少し、議会全体としては翁長氏の勢力が伸びた形だ。翁長知事は大勢判明後の5月6日未明、「25(議席)で勝利宣言、26以上は大勝利」などと述べ、引き続き辺野古移設阻止に注力することを表明した。
沖縄の新聞には、しばしば本土の新聞が沖縄関連のニュースをどう報じたかを伝える記事が載る。例えば沖縄タイムスは5月21日、「沖縄女性遺棄事件 東京の新聞はどう伝えたか」と題する記事を掲載。この記事では、
「20日付の朝夕刊で多くの面を使って事件の衝撃を伝えた。朝日、毎日、東京は1面トップで、読売は2番手、日経は3段の見出しで報じた」
などと在京各紙の紙面展開の様子を伝えている。こういった記事で、米軍族による死体遺棄事件が本土でも大きな波紋を広げていることが浮き彫りになるわけだ。
朝日は唯一社説で取り上げる
だが、県議選に関する在京紙の扱いは、必ずしも大きくない。もちろん沖縄タイムス、琉球新報の2紙は1面トップで報じたが、在京5紙(東京最終版)のうち1面トップだったのは毎日新聞だけだった。朝日新聞の1面トップは世論調査の結果で、県議選は「肩」と呼ばれる2番目の扱い。朝日は5大紙の中では唯一社説に取り上げ、
「日米両政府はこの民意を重く受け止め、『辺野古が唯一の解決策』という思考停止から抜け出す契機とすべきだ」
などと論じた。日経新聞は1面の一番下で小さく県議選の結果を伝え、2面、社会面で関連記事を展開。際立っていたのが辺野古移設に積極的な産経新聞の扱いで、5面の総合面に載っただけだった。5面に載った記事の中でも4番目の扱いで、「菅長官 在職期間2位に」の見出しよりも小さな扱いだった。