理化学研究所などのチームは2016年6月6日、他人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)からつくった網膜細胞を、目の難病患者に移植する臨床研究を始めると発表した。他人のiPS細胞を移植するのは初めて。
参加するのは理研、京都大学iPS細胞研究所、神戸市立医療センター中央病院、大阪大学の4施設。視野がゆがみ、失明のおそれもある病気「加齢黄斑変性」の患者が対象。2013年に実施した先の臨床研究では、患者自身のiPS細胞だけを用いたが、今回は患者以外の人の細胞から作製したiPS細胞でも網膜細胞をつくり、移植する計画だ。
患者本人からiPS細胞を作製する場合、移植までの期間は半年以上、費用も約1億円が必要だった。他人のiPS細胞をあらかじめ作製しておけば、期間や費用が縮められる。通常、他人の場合は拒絶反応が起きるが、京大では拒絶反応が起きにくい特殊なタイプのiPS細胞を作製し保管しており、これを研究に提供する。
開始時期は未定だが、17年前半には移植手術を行いたい考え。