「朝茶は福が増す」という諺(ことわざ)がある。朝いただく1杯のお茶が一日の健康を守り、災難から防いでくれ、良いことが必ず起こるという意味だ。
緑茶には多くの健康効果が知られているが、暑い日が続くこれからのシーズンは、冷たい水出し緑茶を飲みたいもの。実は、水出し緑茶には、熱いお茶とは別の素晴らしい健康効果があることが最近わかってきた。暑い季節にピッタリの涼やかな飲み方も一緒に紹介しよう。
1日4杯飲むと心臓病や脳卒中が13~45%減
緑茶の健康効果は、国立がん研究センターが2015年5月に発表した研究成果でも折り紙付きだ。緑茶を1日に5杯以上飲んでいる人の死亡率は、1杯以下の人に比べ、男性で13%、女性で17%低くなる。特に心臓や脳血管、呼吸器系の病気になるリスクが13~45%近くも減るという結果が出た。
この理由は、緑茶に豊富に含まれるポリフェノール(植物由来成分)のカテキンとカフェインによるものだ。カテキンには血圧や体脂肪、中性脂肪を調整する機能があるため血糖値が低くなり、生活習慣病を改善する働きがある。一方、カフェインは血管の壁を修復して血管を健康に保つ。また、気管支拡張作用もあり、呼吸器の機能を改善してくれるのだ。これらの効果で、心臓病や呼吸器系の病気になるリスクが減ると考えられている。
この研究では、緑茶の入れ方は問わないので、水出しやペットボトル緑茶も対象に含めての健康効果なのだ。
ところで、とりわけ水出し緑茶にはどんな効果があるのだろうか。
2016年5月28日放送のBSフジ「華大の知りたい!サタデー」で、「水出し緑茶で免疫力アップ」を特集した。番組には、水出し緑茶特有の健康成分を発見した農業・食品産業技術総合研究機構の上級研究員・物部真奈美さんが出演した。物部さんは2011年のある日、緑茶成分を研究する中で、「お茶をいれる→さます」という作業の時間を短縮しようと、水で緑茶をいれて人間の細胞を加えてみた。すると何と、免疫細胞の「マクロファージ」が劇的に活性化し、異物の有害物質をモリモリ食べ始めたという。
驚いてその理由を分析すると、マクロファージを活性化させたのはカテキンの1種「エピガロカテキン」だとわかった。エピガロカテキンは、緑茶を低温でいれると多く抽出されやすい。だから、水出し緑茶を飲むとお湯の緑茶よりも免疫力が高まるのだ。