これが、「第三者の厳しい目」で見た結果なのか――。
東京都の舛添要一知事は2016年6月6日の記者会見で、政治資金の「公私混同」疑惑について、第三者の弁護士2名による調査報告書の内容を公表した。「違法性はない」と結論付けられた報告書の内容に、会場に集まった100人超の報道陣からは「客観性をどう担保しているのか」など厳しい追及が飛んだ。
「もちろん、違法ではありません」
会見のキーワードは、「不適切とは言い難い」「違法ではありません」の2つだった。会見には、一連の疑惑を調査した「第三者」の佐々木善三弁護士、森本哲也弁護士も出席。両名の口からは会見中、
「~という理由から、不適切とはいえません。もちろん、違法ではありません」
といったフレーズが頻出した。
舛添氏の資金管理団体への寄付は「問題なし」と結論付けたほか、事務所の賃料に関する指摘は「割高とはいえない」「二重支払いは無かった」などと説明。政治資金を使い美術書や美術展カタログを購入している点については、「それらの知識を政治活動に活かしているため、不適切とも言えないし、違法ではない」と指摘している。
また、時代小説や漫画「クレヨンしんちゃん」など、購入した一部の書籍については「不適切」と認定。絵画や美術品の購入については、点数や金額が「あまりにも多すぎる」ため、政治資金の支出としては「不適切だったというほかない」。舛添知事も、弁護士のヒアリングに「オークションを利用すると安く購入できることから、つい買い過ぎた」などと説明したという。
ただ、上記のように「不適切」と判断された支出についても、「政治資金の使途には法律上の制限はない」との理由でいずれも「違法ではない」と判断された。だが、弁護士の調査で適切と判断された項目についても、「首を傾げざるを得ない」ような理由が記述されている。
例えば、舛添氏が2011年に上海で購入した「シルクの中国服」については、
「書道の際に着用すると筆をスムーズに滑らせることができるためであるとのことであり、その説明は具体的に説得力のあるものであった」
といった理由から「不適切でない」との判断になっている。また、舛添氏が3万2340円で購入した高級ブランド「ダンヒル」とみられるバッグについては、「ヒアリングの際に持参しており、実際に使用していることが確認できた」と説明され、不適切でないとされていた。
「逃げる気満々の人選だな」
また、飲食代やホテルの宿泊費など全84件のうち、宿泊6件と飲食14件が不適切ではないとの判断で、「是正の必要あり」との指摘がなされた。ただ、「要是正」となった20件のほぼ全てに、舛添氏からのヒアリングに基づくものか、「政治活動とは無関係であったとはいえない」との「注釈」も添えられていた。
こうした報告書に、記者会見では厳しい追及が相次ぎ、調査を行った佐々木・森本両弁護士には、「客観性をどのように担保するのか」「どうやって事実確認を行ったのか」などといった質問が飛んだ。
だが、質問に答えた両弁護士からは「我々がそう判断したということ」「調査は必要に応じて行った」などの答えばかりで、明確な返答はなかった。また、相次ぐ指摘にいらだった様子の佐々木弁護士が、「誰にヒアリングしたのか」と聞いた記者の1人に、「ヒアリングにどんな意味があるんですか」と逆質問を浴びせるシーンもあった。
調査を担当した佐々木弁護士は、小渕優子元経済産業相の関連団体をめぐる政治資金規正法違反事件でも、2015年に第三者委員会の委員長を務め、小渕氏に法律上の責任はない、との判断を下していた。その後、小渕氏は「不起訴」となった。
こうした経歴も含めて、今回の報告書について、ツイッターやネット掲示板などでは、
「逃げる気満々の人選だな」
「都民が納得できるような弁明は無かった」
「ダメだこりゃ 『適切適法』連呼じゃ誰も納得しないって」
といった批判的なコメントが相次いだ。
舛添氏は報告書の内容について、会見の中で「大変厳しいご指摘を頂いた」とコメント。不適切と判断された飲食費・宿泊費と同額を慈善団体に寄付することや、湯河原の別荘の売却など「けじめをつける」と宣言。「生まれ変わった気持ちで新たに都政に臨んでいきたい」と続投を表明。給与の返上などについても質問が飛んだが、現在は考えていない考えを明らかにして、1時間15分の会見を終えた。