北海道七飯町の山林で小学2年生の田野岡大和君が、両親に「置き去り」にされた問題をめぐり、函館中央署は「心理的虐待の疑い」があるとして、大和君の両親を児童相談所に通告した。
「置き去り」行為については、未だ「しつけ」か「虐待」か議論が分かれており、今回の措置にも、「そこまでしなくても」「当然のこと」とネット上では賛否の声が上がっている。
「しつけ」か「虐待」か、議論が再燃
函館中央署が大和君の両親を児童相談所に通告したのは2016年6月3日。大和君が自衛隊の演習所の小屋で6日ぶりに発見、保護された日だ。函館児童相談所は道警や学校を連携して近く、大和君と両親を対象に児童福祉司による事情聴取を行う。
「置き去り」騒動は同じころ、金沢でも起こっていた。報道によると5月23日、小学2年生の男児が「宿題をしなかった」として、金沢市額谷町の山道で母親に置き去りにされ、一時行方不明となった。男児は約3時間後に数百メートル離れた場所で発見された。そして、北海道の一件と同じく金沢中署は「心理的虐待にあたる」として、同市の児童相談所に通告している。
「しつけ」か「虐待」か――。北海道の「置き去り」に対するネット上の声は、当初から割れていた。自分が過去に「された」、逆に自分が子どもに「した」体験談が少なからず見られた。さらに、大和君が見つかり両親の「疑惑」が晴れた、との見方もある。父親は大和君が見つかった3日に記者会見し、「私の行き過ぎた行動で息子につらい思いをさせた。深くお詫びします」と、強い反省を語ってもいた。
そんな中での児童相談所通告に疑問を覚えた人もいるようだ。ツイッターを見る限り
「親が責められまくって可哀想すぎる」
「もういいだろ、この話は」
「もう、そっとしててあげてください」
と両親を気遣う声は多い。加えて、しつけとしての「置き去り」行為がすぐ「児童相談所案件」になることを危惧する声も出ている。
児童虐待「親も子どもも、その認識を有していないことが多い」
一方、通告は当然だとする意見もある。弁護士の紀藤正樹さんは16年6月6日のブログで、函館中央署の対応を「世論に流されず、警察の職分をわきまえたもので、極めて冷静なもの」と評価している。念頭に置いたのは、これまでの児童虐待事件だ。
「親に善意に考えた結果が、最悪の結果を生んできた」(原文のママ、以下同)。そう振り返り、「万が一の悲劇を二度とおこならないようにする、ということです。その調査の方法としては、警察よりも、児童虐待の専門家である児童相談所がふさわしい」と説明した。
大和君が発見されたから両親を「許すべき」という主張にも懐疑的だ。児童虐待は「親も子どもも、その認識を有していないことが多い」と指摘し、「真相解明の手続はきちんと踏むべき」と反論している。
ちなみに過去、児童相談所に通告された「置き去り」行為のほとんどは捨て子など保護責任者遺棄の色合いが強いものだ。04年、北海道浦河町の牧場従業員女性が「言うことを聞かない」5歳の長女を裸のまま牧場に放置した一件は、両親が「しつけ」を主張した数少ない事例で、保護責任者遺棄には問われなかった。