リニア大阪延伸「前倒し」論のウラ JR東海の本音とは

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   リニア中央新幹線の大阪延伸を前倒しする議論が、ここにきて盛り上がっている。当初予定は2045年完成だが、 6月2日決定した政府の「骨太の方針」に「整備を促進するため、財政投融資の活用を検討」と明記されたのだ。大阪の経済界や自民党議員らが強く求めていることが背景にある。政府・与党の介入を嫌っていたJR東海の心変わりなのか?

   リニア中央新幹線は、JR東海がまず2027年に東京~名古屋、ついで2045年に名古屋~大阪の開業を目指している。建設費約9兆円のうち、JR東海は東京~名古屋間の建設費を5.5兆円と試算。長期債務残高を適正水準と見込む5兆円以内にとどめるため、JR東海は名古屋開通から8年間は大阪延伸に着工せず、経営体力を回復した後の2035年に着工することにしている。

  • JR東海のリニア
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「政府から具体的な提案があれば...」

   これについて、大阪府・市と関西経済連合会などの経済界は協議会を設け、名古屋、大阪の全線同時開業、つまり2027年開業を要求し、金融支援を国に求めている。「リニア全線開業の経済効果は絶大」との理屈で、要望を受けた関西選出の自民党国会議員らが政府の経済政策の大方針となる「骨太の方針」に財投の活用を盛り込むよう求めるのが、夏の「年中行事」化していた。

   特に今(2016)年は、15年12月に山梨県で本格着工してから最初の骨太の方針ということもあり、ヒートアップしているわけだ。

   従来の新幹線と異なり、リニアは国でなくJR東海の事業として計画されている。そのJR東海の柘植康英社長が16年5月25日の記者会見で、「大阪までの開業を早く実現したい思いは我々も同じ。政府から具体的な提案があれば、受け入れが可能か検討する」と政府の支援受け入れに前向きともとれる発言をし、6月1日には安倍晋三首相が記者会見で「大阪延伸前倒し」の方針を表明し、一気に「既成事実化」した。具体的には最大8年前倒しが関係者の共通認識になっている。

   JR東海は「民間企業として経営の自由、投資の自主性の確保が大原則で、国に資金援助は求めない」とする立場を原則とし、大阪までも自己負担で建設する方針を示してきた。東海道新幹線というドル箱を抱え、信用力も高く、低利の社債発行や銀行借り入れで資金調達が可能で、財投に頼らなくても計画の遂行が可能ということだ。

   実際、リニア中央新幹線に財投を活用する案は2014年度から毎年、「骨太の方針」盛り込みが浮上しては、具体的に進展しないということを繰り返している。「前倒しできればしたい」「具体的な提案があれば検討する」という柘植社長の発言も、前年までと基本的に変わっていないとの指摘もある。

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