【男と女の相談室】高層階で育った子に転落の危険が 高さを怖がらない「高所平気症」

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   子どもが高層住宅から屋外に転落する事故が、近年増えている。東京消防庁によると、都内で2011~15年の間で114人が、マンションのベランダや窓から落下し、1人が亡くなっている。エアコンの室外機によじ登って事故につながるケースなどが見られるという。

   生まれた時からマンションの高層階で暮らし続けると、高さに恐怖心を持たなくなる可能性が高まる。親としては注意しておきたい。

  • 高層マンションが増えているが…
    高層マンションが増えているが…
  • 高層マンションが増えているが…

ベランダのすき間に足をかけて登ろうとする

   都内のマンションの5階に住む40代男性に取材した。現在11歳の娘と7歳の息子が生まれる前から、同じ部屋に住んでいる。2人が幼いころは、夫婦で目配りするのはもちろん、自力でベランダに出られないように窓に細工をしておいた。成長後も、子どもたちだけで勝手に出ないように厳しく言いつけた。専業主婦の妻が買い物に出かける際は、極力2人を一緒に連れて行く。子どもたちだけを部屋に残さないように配慮した。

   だが最近、親子で一緒にベランダに出るとドキっとする時がある。息子が、ちょっとしたすき間に足をかけてよじ登ろうとするのだ。娘も、5階の高さから下をのぞきこむのに、ちゅうちょはない。「子どもの転落事故が増えているというニュースを聞くと、ハッとしますね」と男性は話した。

   高層階で育った子どもたちは、それが「当たり前の環境」として受け止めてしまうのか、高いところを怖がらなくなる。最近では「高所平気症」と呼ばれている。福島学院大の織田正昭教授(子ども心理専攻)は2015年11月5日放送の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)で、「怖い」という感覚は本能ではなく後天的なものであり、4歳までに身につけるのが望ましいと述べた。

   織田教授はさらに、高層マンションの場合、窓から外を見ても地面が見えず、ベランダから見える景色を安全だと思い込んでしまうとも指摘した(2016年4月13日付の産経WEST記事)。これで高さの感覚がまひしてしまい、高い場所での恐怖心が失われるのだ。

猫の「高所落下症候群」にも注意を

   実は「高所平気症」になるのは人間に限らない。高層階で飼うペットの猫にも、同じ「症状」が現れるようだ。

   獣医麻酔外科学会のウェブサイトには、2010年9月9日付の同学会誌に、猫の「高所落下症候群」のリポートが掲載されている。1件目はマンションの6階から、2件目は7階から、いずれも転落して骨折したという。2匹とも治療を受け、助かった。

   リポートによると欧米でも、こうした猫の高所落下症候群の報告があるそうだ。最後に「今後このような症例は増えてくる社会背景があるが、飼主への啓蒙により予防することが大切」と警鐘を鳴らしている。

   複数の獣医のブログにも、同様の事例が書かれていた。神奈川県の動物病院のブログには、猫同士がけんかして1匹が高所から落下、骨盤を骨折した例が紹介されていた。猫は高い場所が好きで、たとえ落ちても体を巧みに回転させて無事に着地するイメージがある。だがこのブログでは、猫が建物の2階(約3.6メートル)以上の高さから落下した場合、さまざまな損傷をこうむる可能性が高いと紹介している。

   高層階に住む際、子どもの安全を守るのは言うまでもないが、猫をはじめペットの行動にも気をつけた方がよいだろう。

姉妹サイト