自動車業界に驚きの声
ただ、その後、自動車の技術開発の方向性は大きく変わり始めた。従来からの環境対応に加え、大手自動車メーカー各社は人工知能(AI)を搭載した自動運転車の開発にしのぎを削り、インターネットとつながるクルマの進歩は著しい。トヨタ自動車が2016年5月24日(日本時間25日)、自動車の配車サービスをネットで提供する米ウーバー・テクノロジーズと提携検討を発表するなど、自動車メーカー各社の重要な提携先は、今やIT企業になっている。
自動車メーカーが求める部品や技術が大きく変わる中、従来から「聖域はない」と語るゴーン氏は、緊密だったカルソニックカンセイとの系列関係にもメスを入れることを決断。1000億円を超える可能性があるカルソニックカンセイの売却益を、燃費不正問題の発覚をきっかけに日産グループ入りを決めた三菱自動車の買収に充てるとともに、AIや世界的な環境規制強化を受けた電気自動車(EV)など、技術開発の主戦場となっている最先端分野の研究開発や提携に振り向ける方針だ。
自動車業界では、1999年から続くゴーン氏の系列解消がカルソニックカンセイにまで及んだことに驚きの声が広がっている。同時に「時代に合わせた判断を冷徹に下すところはまさにゴーン流」(メーカー幹部)との声もある。
一方のカルソニックカンセイにとっても、日産の保有株売却は日産以外の取引を拡大するチャンスになり得る。ただし、現状は取引の約8割が日産向け。日産依存度の高い経営からどう脱却していくのかが問われる。