競走馬の90%が胃潰瘍にかかっているという驚きの数字があきらかになった。
これは、整水器シェアでトップの日本トリムと帯広畜産大学が共同研究で、「水素水」が競走馬の胃潰瘍の予防にも効果があると、発表したなかで示された数字だ。
「電解水素水に予防効果」という研究結果の中で
日本トリムと帯広畜産大学臨床獣医学研究部門の共同チームは、「馬の胃潰瘍発症に対する電解水素水飲用による予防効果」の研究成果を、2016年6月1日に発表した。それによると、競走馬の約90%、乗用馬の約70%が胃潰瘍に罹っていて、電解水素水を飲むことで馬の胃潰瘍の発症に予防効果があることが明らかになったという。
研究では、健康な5頭の馬(サラブレッド)に対して、飲用水を水道水から電解水素水に変更し、一定期間を経た後、実験的に胃潰瘍を発生する薬を投与したところ、水道水に比べて胃潰瘍の発症に有意な抑制がみられた。
電解水素水の生成器には、日本トリム製の「トリムイオンHD‐24K」を使用。1日4回、18リットルの容器に電解水素水を入れて、馬に自由に飲ませた。
その結果、水道水では、胃潰瘍発生薬を投与した後に胃潰瘍を発症した馬は5頭すべてで、胃潰瘍のスコアも「直径8ミリメートル以上の大きな単発性または大きな多発性の潰瘍」がみられた。それに対して、電解水素水では5頭のうち2頭は発症せず、また胃潰瘍のスコアも「直径8ミリメートル未満の小さな単発性または小さな多発性の潰瘍」となった。共同チームは、電解水素水における胃潰瘍スコアは、水道水に比べて統計的に有意な低値を示したとしている。
人間の胃潰瘍との関係については触れていない。
馬の胃潰瘍は「沈黙の潰瘍(silent ulcer)」とも呼ばれており、運動器の疾患のように目に見える症状を示さないので、「わかりづらかった」(JRA競走馬総合研究所)という。馬を管理する調教師などは、食欲や体調、運動のようすから判断し、これまでは十分な休養をとらせるなどで対処してきた。
2009年以降は、馬専用の胃腸薬が胃潰瘍の治療にも投薬されるようになったが、高価なうえ、長期間投与し続けることが必要なことや治癒後も予防のための投与が必要なため、馬の健康管理や費用負担に頭を痛めていた。電解水素水が胃潰瘍の予防に有効となれば、馬の治癒力を高めることができるほか、治療への負担を大きく減らすことに寄与すると、日本トリムなどはいっている。
「馬は神経質ですから」
それにしても、競走馬の90%が胃潰瘍に罹っているというのは、ちょっとした驚きだ。史上最強世代の呼び声が高かった2016年の日本ダービーでは、2013年生まれのサラブレッド6913頭のうち、18頭が出走。「ダービー馬」となったマカヒキ号をはじめ、どの馬も胃潰瘍との闘いに勝っての晴れ舞台だったことになる。
一般的に、馬はデリケートな動物といわれるが、胃潰瘍の原因とされるストレスを、そんなに多くため込んでいるのだろうか――。
たしかに競走馬ともなると、毎日のように騎手を背負って厳しいトレーニングを積んでいる。競馬場などへの輸送も負担になる。食欲が落ちたり、住環境が変化したりして体調が優れないこともあるだろう。しかも、強い馬ほど自身で体調をコントロールする能力が高く、賢いとされる。
JRA競走馬総合研究所は、「人間と同じですよ。人間でもストレスが原因で胃潰瘍に罹る人は少なくないでしょう。食べ物が偏ると胃に負担がかかり、胃潰瘍になるリスクが高まりますが、それと同じようなことが馬にもあると考えています」と説明する。
さらに、馬の胃潰瘍の原因については「馬は神経質ですから」としたうえで、こう説明する。
「馬の胃はサッカーボールよりも少し小さいくらいの大きさなので、すぐにおなかをすかしますし、いつも草を食んでいます。その一方で、馬は音やモノの動きなどに敏感で、怖がりで気が小さいところがあります。胃液の分泌量などによって胃に変化が生じ、胃への負担が増すことで胃潰瘍を引き起こすとみています」
最近は内視鏡で検査できるようになったが、「トレーニングセンターなどの、ふだんの診療で使われることはまだ少ない」と、見た目で判断する状況が続いているようす。
実際の治療にも、人間に処方される薬が投与されるケースが少なくないようだが、投薬までには検査を繰り返す。「サラブレッドは品種改良を繰り返していますから、クスリに弱いんです。とくに飲み薬は慎重です」と、かなり神経を使っているようだ。