「敵」といえども、世界の趨勢には逆らえない?
自動車メーカーにとって、シェアリングエコノミーは基本的に敵だ。消費者がそれぞれ自動車を持って自分で運転して移動してくれればいいものを、ドライバーとしては素人の自家用車をみんなで共有しようというわけで、社会全体で必要な自動車の数は従来より少なくて済むのがシェアリングエコノミーの世界だからだ。
しかし、だからと言って「シェアリングエコノミーに関わらないのでは世界の趨勢に置いて行かれる」(トヨタ幹部)との危機感がトヨタを突き動かしたようだ。同様の理由で歓迎できないはずのレンタカーにも自ら乗り出しているのと同じ理屈と考えればいいだろう。既にトヨタに先行して、米ゼネラルモーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)といった世界大手が、ウーバーと同様のサービスを展開している新興企業と提携していることもトヨタの背中を押した。
ウーバーは、客を乗せる自家用車について、あまり古い車を使うことは安全対策上、認めていない。トヨタが狙ったのはここだ。ドライバーが定期的に車を買い換える必要があるというややニッチな市場に入り込み、トヨタ車をリース販売することを画策する。確かにいち早くそこをおさえれば、一定の需要は確保できる。
もっとも日本国内は規制の壁が高いうえに、「抵抗勢力」であるタクシー業界の反発が強く、ウーバーが自由に活動できる状況にない。京都府京丹後市で今年5月、試験的にウーバーの事業が始まったが、あくまでも「過疎地の特例」という位置づけで、運転手や車両の登録が必要で、乗車できる地域も限定されたものだ。いくら日本最強企業のトヨタと組むとはいえ、ウーバーが日本で本格的に事業を拡大するのは簡単ではなさそうだ。