北海道で無事保護された北斗市立浜分小2年の田野岡大和(やまと)君(7)は、「置き去り」から7日間の様子が少しずつ分かってきた。それは「大人」の想像を超えた子供の行動だった。
おにぎりを手にした大和君は、やや痩せた様子はあるものの、顔色もよくしっかりと立っている。これは、2016年6月3日放送の日テレ系「ミヤネ屋」が入手したという写真の姿だ。
「置き去り」場所から続く林道
報道によると、大和君は5月28日17時ごろに七飯(ななえ)町の林道で置き去りにされた後、「山の中を歩いてきた」と話した。この日の夜のうちに、隣の鹿部町にある陸上自衛隊駒ケ岳演習場内の宿舎にたどり着き、そこで水道水を飲むだけで1週間を過ごしてきたという。
ここは、置き去りの現場からは、北東へ直線距離で6キロ離れている。警察などでは、現場から15キロ四方を捜索しており、演習場内は対象外になっていた。
そんな中で、大和君は、どうやってここまでたどり着いたのだろうか。
七飯町の総務財政課によると、置き去りの現場は三叉路の分岐点になっている。大和君はそこで、父親が運転していた車が通った道とは違う道に入ったらしい。ここも林道になっており、そのまま行くと演習場で行き止まりになっていた。この林道一帯も捜索したというが、演習場内は捜索しなかった。
「砂利道の上り坂になっており、大人でも約10キロを歩いて2時間ではとても演習場まで行けないようなところです。7歳の子供の行動範囲を考えると、あえて山に向かうことは考えられません。それも夜ではそこまでの行動はしないだろうと、捜索範囲を決めました」
町では、演習場まで捜索に含めなかった理由をこう説明した。
「医学的に見ても、奇跡的だと思います」
前出の「ミヤネ屋」では、田野岡大和君が歩いたとみられる林道をリポーターが実際に歩く様子を紹介した。
車が1台は通れるような砂利道だったものの、大人でも2、3時間で上るのはきついとリポーターが報告していた。
陸上自衛隊第11旅団の広報室では、J-CASTニュースの取材に対し、駒ケ岳演習場の出入り口は、5月28日はどこもカギが閉まっていたと説明した。
ただ、演習場の境界は、ポールを立ててロープでつないだり、簡易的なフェンスが張っていたりするだけになっている。立ち入り禁止の看板は出していたというが、道を少し逸れれば演習場内に入ることはできるそうだ。
大和君は、何らかの方法で演習場内に入り、宿舎を見つけたらしい。宿舎のドアの1つはカギが開いており、そこから中に入っていた。夜は、宿舎内に積んであるマットレスにくるまって寒さをしのいでいた。
医師の木下博勝さんは、「ミヤネ屋」の取材で、大和君が無事だったのは、「医学的に見ても、奇跡的だと思います」と明かした。
子供の虐待で1か月ぐらい水分しか与えられなくても生存できたケースがあるといい、「ラッキーだったのは、水分を摂っていたこと」だとした。ただ、低体温になると体の機能がすべて低下してしまうとし、大和君は、あまり動き回らず夜はマットにくるまっていたことが大きかったと指摘した。