安倍晋三首相が消費税率の10%引き上げの再延期を発表する直前のタイミングで、財務省が「財務の精霊 ザイセー」が登場する、なかなかシュールな動画をインターネットに公開した。
「精霊」が高校生に財政問題を解説する動画の内容もさることながら、動画公開の時期が時期だけに、さまざまな憶測を呼んでいる。
財務省が動画「日本の『財政』を考えよう」を公開
財務省が、財政学習動画「日本の『財政』を考えよう」を公開したのは、2016年5月30日。折しも、世界経済をテーマにしたG7、伊勢志摩サミット直後で、6月1日に安倍首相が消費増税の再延期を公表するとの見方が強まっているタイミングだった。
麻生太郎財務相が、「再延期」の方針を明らかにした安倍首相に対して「(衆院を解散して)信を問わないと筋が通らない」と反対を表明して激しく詰め寄ったように、財政規律を求める財務省の立場としては「消費増税の再延期」には大反対のはずだ。
消費増税の再延期が決まった、このタイミングでの公開に、財務省の思惑を推し量る向きは少なくない。公開時期について、財務省の担当者は6月3日、「たまたまです」と回答。「動画が完成したのが5月30日で、最後の推敲を終えてから、すぐに公開しました」と明かし、消費増税の再延期とは「まったく関係ありません」と強調する。
そんな動画の内容は、ある高校の男子生徒のもとに、財政に関心のある人にだけ見える精霊「ザイセー」が現れる。黒マント(内側は真っ赤)をはおり、チョビヒゲをつけている。かつての人気アニメに出てくる「サリーちゃんのパパ」風だ。ザイセーは「日本の財政に関心をもっている若者に力添えして理解を深めてもらう」ことが目的といい、高校生が日本の財政状況について考えるというストーリーだ。
ザイセーは2016年度の歳入が、消費税と所得税、法人税とその他の税収をあわせて全体で62兆円になると説明。その一方で、歳出はその多くが高齢化によって医療や年金、介護、子育てなどの社会保障費に充てられていて、そのほかに地方交付税や公共事業費、防衛費、教育費などに使われている。全体で97兆円にのぼる。歳出は歳入を大きく上回り、その不足を補うために国は多額の借金を背負っていると、「税収不足」を指摘する。