北海道七飯町の林道で行方不明になっていた7歳の男児、田野岡大和君が、6日ぶりに救助された。発見時は、行方不明となった場所から直線距離で7キロも離れた場所にある陸上自衛隊演習所内の小屋にいた。
大人と比べて体力のない小学生が、水以外は何も口にしないまま6日間を生き延びたことに、驚きの声が上がっている。
自分の息子が1週間何も食べずに...「無理ですよ」
大和君は、行方が分からなくなった2016年5月28日には徒歩で北海道鹿部町の陸上自衛隊駒ケ岳演習場内にある小屋にたどり着いたという。以後、自衛隊員に発見された6月3日朝まで同じ場所で過ごしていた。小屋の中には、隊員が宿泊の際に使うマットレスが置かれており、男児はそれにくるまって暖をとっていた。水道があり水は確保できた。ただし食料はなかった。
水だけでおよそ1週間を生き延びた7歳の大和君のどこに、それほどの体力が備わっていたのだろうか。一般的には、子どもの方がおとなよりも体力が劣るはずだ。8歳の息子を持つ東京都の40代男性は、「あんなに細い小学生が『水だけで1週間』は驚異的」と目を丸くした。11歳の息子の父親である神奈川県の40代男性も、「おとなの想像力を超える体力を持つ子というのは、ちょっと想像できません」と話す。
別の都内在住の40代男性は、大和君と同じ7歳の息子がいる。自分の子だったら1週間水だけで生きられるか、との問いに「無理ですよ」と断言した。確かに休日、公園に遊びに連れて行くとおとなたちを横目に全力で遊び回り、息子の体力に驚くことはある。だが、一切食事をせずに何日も過ごして体がもつとはとても思えない、というわけだ。
子どもの生命力を感じさせる話は、時折聞こえてくる。2004年の新潟県中越地震で、発生から92時間後に2歳の男児が救出された。災害時における人命救助では、72時間を境に生存率が急激に落ちるとされる。2016年4月の熊本地震でも、発生から約6時間が経過した後で、生後8か月の赤ちゃんが倒壊した家屋からほぼ無傷で助け出された。ただ、いずれも「奇跡的」な事例で、子どもが非常時になると常に驚異的な強さを発揮するとは言い切れない。
体温維持できないと3時間程度しか生きられない
「遭難」した子どもが食べ物なしで数日間過ごした後、無傷で助けられた――今回の大和君と似た話が、2015年1月19日放送の「トリハダ秘スクープ映像100科ジテン」(テレビ朝日系)で紹介されていた。
ロシア・シベリアで2014年8月、3歳7か月の女児が11日間、森の中をさまよった末に捜索隊の手で救出された。発見時は体重が減っていたが意識ははっきりしており、命に別状はなかった。8月とはいえ、シベリアの大地は夜になると気温が氷点下近くまでに下がる。しかも森には野生動物が生息しており、過酷な環境だ。
番組では、遭難時に生き抜くうえで重要な「3」の法則を説明した。これは、ナショナルジオ・グラフィックが刊行した「世界のどこでも生き残る完全サバイバル術」を引用した内容だ。「酸素がないと3分程度」「適切な体温維持ができないと3時間程度」「水を飲まないと3日程度」が、生存できる時間だという。
捜索中に、女児が森から出て水場の近くを行き来している痕跡が見つかった。また発見時には、自分の背丈より高い草むらの陰でうずくまっており、草が冷気を遮断していたとみられる。女児は、水と体温維持の条件をクリアしていたのだ。
北海道で不明になった大和君も、小屋で水を確保したうえ、雨にぬれることもなくマットレスで体温維持ができた。偶然に見つけた場所か、本人が意識的に探しあてたのか、現時点で詳細は不明だが、結果的には自らの命を救う上でこのうえない環境に身を寄せたことになる。