世界保健機関のがんリスク評価では「漬物」と同じだが
携帯電話の電磁波ががんを発症するかどうかについての研究は、発症リスクを高めるとするものと、否定するものとが多くがあり、議論はすれ違いだ。2011年に世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)が、携帯電話の電磁波のがんリスク評価を発表した。それによると、5段階の評価のうち真ん中の「グループ2B」(発がん性があるかもしれないが、限定的)だった。同じグループには、自動車排気ガス、コーヒー、漬物(アジア式)などが含まれる。
携帯電話の電磁波をいちばん近くで浴びるのは脳なので、脳腫瘍に関しても以前から指摘されている。今回の発表後、各メディアの取材に対し、多くの専門家がコメントを発表している。米ペンシルベニア大のケネス・フォスター教授は、WSJ紙の取材に、「携帯電話が導入されてから過去数十年間、多くの国で脳腫瘍の発症件数が増加したという証拠はないのだから、今回の米政府の調査結果に強く反応する国は少ないだろう」とコメントした。
一方、自然保護団体「環境健康トラスト」の創立者デブラ・デーブスさんはこう語った。
「受動喫煙やアスベスト、環境ホルモンに関する問題も、最初は今回の研究発表と同じような扱いでした。多くの人に被害を及ぼすという証拠が出るのを待ってから、やっと対策に乗り出すのです。それでは私たちの子孫が代償を払うことになります。脳腫瘍が現時点で多く発生していないからといって、携帯電話が安全であることの証明にはなりません」